弁当工場内で、マスクを下して揚げ物を素手でつまみ食いするなどの様子が撮影された中国語ナレーションの動画がXで取り上げられ、それが拡散する騒ぎになっている。その後、仙台市保健所が市内のこの工場に立ち入り検査に入る事態に発展している。
ナレーションや画面のコメントでは、中国語で弁当に「薬品を入れてやろうか」という男性の発言があったが、市では、音声やコメントは後から勝手に誰かが入れたものだと工場から説明を受けたと取材に明らかにした。
マスクを下げて、揚げたフライを素手で口に
「日本のお弁当工場での普通の1日。朝9時、出勤」。話題になった動画は、こんな日本語のコメントが画面に出て、工場の従業員という女性らが自転車で勤務先に向かうとするシーンがまず流れた。
この動画は、男性と女性が中国語で会話するナレーションの形式だ。
工場では、9時半から忙しくなり、男性が麻婆豆腐をかき混ぜ、それが弁当に詰められていく。ハンバーグ弁当がずらりと並ぶ映像も映った。
そして、「小日本人に薬品を入れてやろうか」という中国語コメントや男性の声が流れた。続いて、マスクを着用していない人が素手で餃子1つをつまみ上げる様子が映り、「午後1時、やっと一段落」と日本語のコメントが出た。昼食に焼きそばを食べる男性の姿が映り、1時間休憩して、豆腐を切る様子が撮られた。「午後は仕事少なめ。終われば、帰れる」との日本語コメントの後、排水溝などを掃除して、4時半に終業したとされた。
その後は、別の映像が流れ、「盗み食いじゃなくて、ちょっと味見するだけ」との日本語コメントが出て、女性がマスクを下げて、揚げたフライを素手で口に入れる様子が映っていた。「食べちゃダメって言われても、こっそり二つくらいは頂いちゃおう」とのコメントも出て、マスクを下げてビニール手袋の手で唐揚げを1つ食べる人の姿もあった。
この動画は、3分強の長さがあり、2024年12月14日にXで取り上げられた。これが拡散して、1000万回以上も再生され、不衛生ではないかとの声が上がるとともに、薬品を入れるというナレーションに心配や不安が広がった。
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「弁当による食中毒の情報は確認していません」
自転車で通勤する動画の風景から、仙台市内だとネット上で特定され、情報提供を受けた市議会の議員が、Xで次々にこの動画に言及し、市への確認に動く騒ぎになった。
12月19日の市議会の健康福祉委員会などでも、議員から動画への質問が出て、市保健所の生活衛生課長らが説明に追われた。
生活衛生課長は同日、J-CASTニュースの取材に対し、動画が撮られたのは、仙台市内の弁当工場だと特定し、17日に立ち入り調査に入ったと明らかにした。
「特に、『薬品を入れてやろうか』という日本語コメントに着目しました。これまでの調査で、元の動画は、今年の春から夏にかけて撮影され、この工場の従業員がTikTokに投稿したと工場から説明がありました。撮影者については、調査中です。このときは、薬品などについての音声やコメントは入っていなかったとのことでした。動画はその後、削除されており、この従業員以外の誰かがこの動画を編集して、音声やコメントを加えて投稿されたということです。弁当に薬品が入れられたことも、確認されていません」
工場の衛生管理に問題がなかったのかについては、こう話した。
「製造ラインに入っている人が、作業中にマスクを外してつまみ食いしたとしたら、よくない行為だと思います。ただ、作業中のダメな行為を例示する従業員教育のために撮られたなどの可能性もあり、実態があるのか、まだ聞き取り調査しているところです。弁当の販路についても、確認中です。健康被害については、弁当による食中毒の情報は確認していません」
この件をXで取り上げて経済環境委員会でも質問した伊藤優太議員(無所属)は19日、取材に対し、「動画の内容については、衛生管理上問題があり、市が責任者にも昨日聞き取りをして、報告書の形で工場に提出を求めていると聞きました。市は、その内容に沿って、今後指導していくとの説明がありました」と話した。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)