「動画を公開するな」タイに移住した人気YouTuberが“身の危険を感じた”体験。一見健全に見える店で…

世界中のスラム街や歓楽街を訪れ、そのリアルな様子を発信している旅系YouTuber「EXIT JACK」のマンペーさん(35歳)。タイ人モデルのヴィエンナさん(29歳)と結婚し、現在はバンコクで家族とともに生活を送っている。そんな彼が、これまでに経験した危険な出来事について語ってくれた。

◆バンコクの“ぼったくりタクシー”で「50バーツのはずが50ドルに」

現在、約5万人以上の日本人が暮らすバンコクは一見安全な都市である。しかし、マンペーさんによれば、日常生活でも注意が必要な場面もあるという。

「普段の生活では大きな危険を感じることは少ないですが、移動時には気をつけています。バンコクの交通事情としては、道がとにかく混雑しており、事故も多いです。特にバイクタクシーは便利ですが、運転が荒いこともあり、怖いときがあります。家族での移動はレンタカーを利用しますが、バイクに割り込まれることもしばしば。ただ、タイ人らしく笑顔で会釈をすれば、すぐ道を譲ってくれることも多いですね」

また、旅行者にとって特に気をつけるべきは、“ぼったくりタクシー”の存在だともいう。

「数年前にナナプラザ(バンコクの歓楽街)近くでタクシーを拾った際、メーター料金が50バーツ(約220円)だったはずが、『50ドル(約7500円)だ』と言われました。歓楽街の付近にいるタクシーは、夜になるとメーター料金ではなく、“交渉制”になることが多いため注意が必要です」 

◆撮影した動画がお蔵入り


これまでYouTubeの撮影を通して、数々の危険な目に遭ってきたマンペー氏。その中でも忘れられない出来事を聞いた。

「ナナプラザで撮影している際、『何を撮っていたんだ』と絡まれ、殴られそうになりました。相手は明らかにおかしく、薬物を使用している様子でした。また、パッポンのぼったくりバーでは、無料と言われたストリップショーの料金として日本円換算で1万円以上を請求され、拒否すると脅されました。そこで警察を呼ぼうとすると、ドアを閉められ『ヤクザを呼ぶ』と脅迫されました」

結局、2人で飲んだドリンク代の200バーツ(約900円)だけを払って事なきを得たという。

そんな様々なトラブルをくぐり抜けてきたマンペーさんが、バンコクで経験した「もっとも身の危険を感じたエピソード」とは?

「バンコクで表向きは健全なお店を撮影した際、後日、知人を通じて『お前が撮影したことは分かっている』『動画を公開するな』と脅迫されました。そこでは複数の違法行為が行われていたようです。さらに、僕の妻がタイ人であることも知られていたため、リスクを考えて動画の公開を取りやめました。一見健全に見える店でも、裏では何が行われているか分からないという怖さを実感しました」

◆トルコの“夜の店”で26万円の請求、車で誘拐されそうに


ここからはバンコク以外のエピソードも紹介しよう。トルコでは、あわや大惨事……。

「トルコで『奢るから飲みに行こう』と声をかけられ、その誘いに引っかかってしまいました。安いバーに行った後、女性がいる店に連れて行かれ、会計のときに当時のレートで26万円ほど請求されました。支払いをしない限り出られず、ATMに連れて行かれる羽目に……。

警察を呼ぼうとすると、『トルコではISIL(過激派テロ組織)が仕切っているから警察は来ない』と言われ、しまいには車でISILに連れて行かれそうになりました。車から飛び降りるようにして逃げ出し、電気のついている不動産屋のカウンターの下に隠れて一夜を過ごしました。もし逃げなかったら、誘拐されて身代金を要求されていたかもしれませんね」

◆キューバ入国時に6時間の拘束

また、キューバへの入国時には、ジャマイカでタクシーに乗った際に偶然、服に付いてしまっていたマリファナの破片が原因で6時間も拘束されたこともあった。

「最初は刑務所行きだと言われ、キューバの刑務所での生活を想像し、恐怖を感じました。恐らく、賄賂を支払えば見逃してくれたのかもしれませんが、頑なに断り続けました。

最終的には、向こうもお金を取れないと判断したのか、正規の罰金を支払って解放されましたね」

◆海外で危険を最小限に抑えるテクニック

これほどの経験を重ねてきたマンペーさんが、危険を最小限に抑えるためのテクニックを語ってくれた。

「強盗に遭った際、相手は金が欲しいだけなので命を優先して素直に渡します。警察に届け出ればクレジットカード付帯の保険などで戻ってくることもあるため、抵抗はしません。また、被害を最小限に抑えるため、現金は小分けにして持ち歩いています。特にスラムなどの危険地域ではカメラを回すだけでトラブルになることがあるため、細心の注意を払っています」

現地での行動範囲を考える際には「自分で責任が取れるか」を判断基準とし、無理をしないことが重要だという。

「リスクが高いと判断したときは、無理に潜入せず、引き返すことを選びます。また、どれだけ面白そうなネタがあっても、危険度が高かったり、動画を公開することで相手に大きな損害を与えるような場合は控えるようにしています。

ただ、YouTuberの活動が武器になることも多いです。ぼったくりの被害に遭ったときに撮影をしていると、相手から『動画を出さないでくれ』と頼まれることも。犯罪者たちは映像として証拠が残ることを嫌がるため、撮影が犯罪の抑止力になることもありますね」

最後に、海外旅行をする日本人に向けてメッセージを聞いた。

「日本人はお金に対しての意識が低いことがありますが、世界ではお金を稼ぐために命をかけている人もいます。同じ10万円でも、国や状況によってその価値は大きく違い、10万円で命を奪われる国もあります。だからこそ、トラブルを避けるためにも慎重に行動することが大事だと伝えたいですね」

【マンペー】

大阪府出身のYouTuber。35歳。「EXIT JACK」のチャンネル登録者数は57.6万人。観光地ではなくスラム街や貧困街をメインに発信しており、これまで訪れた国は80カ国以上。2022年にタイ人モデルのヴィエンナと結婚。現在は一児の父。2024年よりタイ・バンコク在住。著書に『ハイパーディープ・ワールドジャーニー 危険度&面白さMAXのぶっ飛び海外周遊記』(KADOKAWA)がある。

<取材・文/カワノアユミ>

【カワノアユミ】

東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano