令和3年度時点で119.5万世帯といわれている母子家庭(厚生労働省「 全国ひとり親世帯等調査」)。昨今の物価高の影響もあり、その生活は厳しさを増しているようです。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事である今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より、ひとり親家庭のシビアな現実について、3人の子どもを育てるシングルマザー長谷川さん(仮名)の事例を紹介します。

長男を産み、1度目の離婚…「昼はパート」「夜は水商売」で寝ずに働いた

長谷川陽菜さん……長男(大学生)・長女(小学生)・次女(幼児)

長谷川陽菜さんは2度の離婚を経験し、3人の子どもを育てている。高校を卒業してからずっと、様々な仕事を掛け持ちしながら働き続けてきた。長男と長女は10歳以上離れている。

―1人目のお子さんが生まれたあとに1度目の離婚をされたという形でしょうか。

そうですね。そのときはほとんど寝ずに働いていました。昼も夜もずっと働いていました。夜は水商売をして、お昼もパートで働いて。ダブルで働いてました。

おばあちゃん(陽菜さんの母親)と長男と3人暮らしで、長男はおばあちゃんにずっと見てもらってという感じで。子どもを早くに産んで、まだ若かったので、そういう働き方もできたんですけどね。今はもう夜の仕事は一切してなくて、昼だけなので。

長男と一緒にいる時間は「ほぼゼロ」だった

その頃は、長男と一緒にいる時間がほぼなかったので、それはちょっと後悔ですね。仕事ばっかりになりすぎてたんで、オフの時間もないし。今でも悪かったなと思ってます。「お母さんはお金、お金ばっかり言うけどお金ばっかりじゃない」って中学の頃とかに言われてました。

私も若かったからそこまで長男の心を読めなくて。だから、2番目と3番目の子に対しては、夜は家にいるようにしています。一緒に寝れる時間はつくろうと思って。

―今は3人のお子さんと陽菜さんのお母さんとの5人暮らしですか。

そうです。私の母親ももういい歳だし、3番目もまだ小さいし、子どもを1日丸々預けて仕事をするというのは、もうできないですね。でも、私が仕事に行かないと困るじゃないですか。だから、日曜日は元の夫(2人目の元夫)に下の子どもたち2人を見てもらって仕事に行くことも時々あります。

今後もし私の母親がいなくなったときとか考えたら、自分が子どもたちをずっと見ながらだと仕事ができなくなるじゃないですか。だから、そう考えたら、元の夫とも関係を良くしておかなきゃ困るかなという感じです。子どもからしたらやっぱり父親だし、彼も子どもに対しては普通なので。

(広告の後にも続きます)

子に対しては優しい夫の「裏の顔」

―長谷川さんに対しては違ったわけですか。

酒癖ですね。豹変するぐらいだったので。仕事から帰ったらもうずっと休みなく飲んでる感じです。それで、急に怒り出したり、怒鳴ったりとか。あとは、長男は前の旦那の子なんですけど、下の子たちに対するのとで態度が違うというか。気にしすぎって言われたらそうなのかもしれないけど、私からしたらそこが気にかかってしまって。

例えば長男が小学校、中学校になったときのお小遣いも、こっちから言うのはやっぱり気が引けて。向こうから言ってくれたらいいんですけど、してくれなくて。そういうところですよね。だったら、自分も働いてたし、自分のパート代から出せばいいかって。

だから、離婚して色々なストレスは減りました。お金の面でも、私もずっと働いてきてはいるので、もちろん収入は減っているんですけど、何とかなるというか、何とかせざるを得ないという感じですね。