食事の用意や通院の介助など、さまざまな場面で高齢者の生活をサポートしてくれるホームヘルパー。しかし、利用できるサービスには制限があることに注意が必要です。今回は「訪問介護」について、芸人の安藤なつ氏と介護ジャーナリストの太田差惠子氏による共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より、詳しくみていきましょう。
〈登場人物紹介〉
●安藤なつ…介護歴約20年。現場のことはある程度わかるけれど、制度やお金のことについて詳しく知りたい。
●太田差惠子…取材歴30年以上の「介護とお金」に詳しい介護ジャーナリスト。費用を抑えるための介護制度や、プロの手の借り方について解説。
家事と身の回りのお世話はどんなことをしてくれるの?
□「訪問介護」の担い手、ホームヘルパーの仕事を知る
□通院介助や薬の受け取りも頼める
安藤:日常的なサポートをしてくれるホームヘルパーの仕事は、日々の生活に密着している気がするので、サービスの内容をもっと詳しく知りたいです!
太田:わかりました。ホームヘルパーは、介護福祉士や介護職員初任者研修を修了した人で、高齢者の日常生活を援助するためのカリキュラムをこなした介護支援のプロです。
ホームヘルパーの仕事は、大きく分けると「身体介護」と「生活援助」の2つになります。
身体介護は、食事や入浴、着替えなど直接身体に触れて行う身の回りのお世話のことをいいます。1人で通院するのが難しいケースでは、通院の介助をお願いすることもできます。
ただし、診察の待ち時間は、介護保険の対象外。必要な場合はケアマネジャーに相談してください。
生活援助は、掃除、洗濯、調理、買い物などの家事援助的なサービス。生活必需品の買い物や薬の受け取りなども行ってもらえます。
安藤:プロが身の回りのお世話をしてくれれば、子どもは時間を確保できるし、親の安全も守れるから安心ですよね。
太田:そうですね。日常的な介護はプロに任せて、子どもは家族にしかできない部分でサポートするようにしましょう。
通院などの移動は、車いすのまま乗車できる介護タクシーが便利です。探し方は、ネット検索の他、ケアマネジャーなどに教えてもらう方法もあります。予約の際に介護保険適用外と伝え、見積もりを取り、ドライバーの資格の確認をしましょう。資格のあるドライバーなら、乗降介助や室内介助なども受けられます。介護保険適用のタクシーを利用したい場合はケアプランへの組み込みが必要になります。
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ホームヘルパーにはどんなことでも頼めるの?
□医療的措置が必要なものは頼めない
□要介護者以外の身の回りのお世話は頼めない
安藤:年を取ると、毎日の掃除や洗濯以外でも、「重労働だ!」と感じることが増えていく気がします。たとえば、大掃除とか、そういった家事もホームヘルパーに頼んでもいいものですか?
太田:そう思いますよね。生活援助をやってくれると聞くと、「家事代行」と混同されがちです。
でも、介護保険のホームヘルパーは、お手伝いさんではなく、要介護者の普段の暮らしをサポートすることが目的なので、なんでも頼めるわけではありません。
安藤:そうなんですね。ついついなんでも頼んでしまいそう……。
太田:基本的に、「要介護者の生活に直接必要がないもの」「要介護者以外の人にかかわるサポート」「専門知識を必要とする医療行為」「ケアプランの内容に含まれない援助」については、サポートを受けることができません。
安藤:うーーん、イメージがわかないです。具体的にはどんなことでしょうか?
太田:たとえば、親が2人で暮らしていて、母親は要介護1と認定されて、訪問介護をお願いした場合、母親の食事の用意や洗濯のサポートはしてくれますが、父親の分についてはお願いできません。
安藤:なんと! 「ついでにお願いします」というわけにはいかないんですね。
太田:そうなんです。他にもペットの散歩、庭の草むしり、お金の管理など。1人暮らしの親の話し相手になって欲しい、というような声も聞きますが、話し相手とかお茶のみ相手とかもNGです。
どうしてもお願いしたい場合は、介護保険適用外のサービスとして依頼することになり、その部分は全額実費となります。
安藤:なるほど。わかりました。
太田:身体介護でも、細かな規定があります。たとえば、体位変換はしてくれるけど、床ずれの処置は対象外。通常の爪切りは対応してくれますが、巻き爪など変形していると対応してくれません。どんなケアを受けられるのかは、ケアプランで細かく決められていくので、希望する介護内容を、ケアマネジャーに伝えましょう。
安藤 なつ
メイプル超合金
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)
太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト