ウォーレン・バフェットは大学院在籍時代に犯した過ちを悔やみ、二度としないと心に誓ったといいます。今回は、桑原晃弥氏の著書『ウォーレンバフェットに学ぶ ゆっくりと着実にお金持ちになる56のルール』(ビジネス教育出版社)より一部抜粋・再編集して、その内容について解説します。
自分で考えることの大切さを痛感した大学院時代のエピソード
投資には確固たる理由、それも「自分の頭」で考えた理由が必要だというのがウォーレン・バフェットの考え方です。
しかし、現実には多くの人が「株価が上がっているから」「専門家が推奨しているから」「今の時代、株くらいやらないと」といった単純な理由で買い、また逆の理由で売ったりしています。
バフェットが自分で考えることの大切さを思い知らされたのは1950年、コロンビア大学大学院に在籍していた頃のことです。入学する少し前、バフェットは父ハワードと一緒にミネソタ州ダルースにある金物卸売業者マーシャル・ウェルズという会社の株を25株購入しました。
ある日、大学の授業を欠席して、同社の株主総会に出席します。初めての経験です。そこで経営陣に対して手厳しい質問をする証券会社ストライカー&ブラウンのルイス・グリーンと出会います。
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「ワン・ストライク」…一生忘れられないバフェットの過ち
グリーンも恩師ベンジャミン・グレアムの盟友の1人で、経営に影響力を及ぼそうとしていました。バフェットはそんなグリーンに感銘を受け、好印象を与えようと熱心に話しかけます。
株主総会の帰り、グリーンはバフェットをランチに誘い、最初は他愛もない話でバフェットを楽しませてくれますが、しばらくしてこう質問します。
「どうしてマーシャル・ウェルズを買った?」
バフェットはこう答えます。
「ベン・グレアムが買ったから」
バフェットにはそれ以外にも理由がありましたが、あまり自分の説をひけらかすのもどうかと思い、そう言ってしまいました。
すると、グリーンはバフェットの顔を見て、「ワン・ストライク」と言います。それは「ウォーレン、自分の頭で考えろよ」という意味でした。
バフェットにとってその時のグリーンの目つきと言葉は一生忘れられないものになりますが、以来、バフェットは二度と同じ過ちを犯してはならないと心に誓うことになります。買った理由はバフェットなりにあったものの、心の底に「グレアムが買ったから」という安心感があったのも事実です。
そしてそれは「他人任せ」の投資であり、自分自身が「自分の頭」で考えた、本当に確信のあるものではなかったのです。
バフェットのルール
投資をする時は「他人任せ」にせず、「自分」で考えて決めよう。
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト