M-1グランプリ「令和ロマンは連覇ならず」「敗者復活戦は“オタク芸人”が嵐を呼ぶ」元ファイナリストが激戦を完全予想

 今年もついにこの日がやってきた! 漫才頂上決戦「M-1グランプリ」。昨年の王者「令和ロマン」は、第1回大会優勝の「中川家」以来となるトップバッターからの優勝を成し遂げ、2度と起こるはずがないと思われた歴史を塗り替えた。

 そして、今回は記念すべき20回目の大会。総エントリー数がなんと1万330組と大台である1万組を超えた。20年という歳月を経て、漫才は「見る」ものから「やる」ものへと変貌を遂げる。

 プロ・アマ問わず、1万組が参加した大会ならば、まさに「日本一」いや海外勢の参加者も増えていることから「世界一」の漫才師が決まると言っても過言ではない。刮目せよ!!

◆審査員の変更がどう影響するのか?

 昨年は会場だけでなく、審査方法など「敗者復活戦」に大きなメスが入ったが、今年はなんといっても審査員だろう。

 長きにわたり審査員を務め、審査員だけではない「M-1グランプリ」の顔といっても過言ではない「ダウンタウン」松本人志さんが2024年1月より芸能活動休止中ということで大きな変更がなされた。

<2023年大会審査員>※年齢は大会当時

山田邦子(63)

松本人志(60)

博多大吉(52)

中川家礼二(51)

海原ともこ(51)

富澤たけし(49)

塙宣之(45)



<2024年大会審査員>

博多大吉(53)

中川家礼二(52)

海原ともこ(52)

柴田英嗣(49)

哲夫(49)

塙宣之(46)

若林正恭(46)

石田明(44)

山内健司(43)

 2017年大会より続いた審査員の人数を7人から9人へ変更。「トレンディエンジェル」が優勝した2015年、歴代のチャンピオンを審査員に並べて以来の9人体制となる。年齢も40代が今回は6人。一気に若くなり、20回目から始まる「新生M-1」といった趣も感じさせる。

◆注目は「日本エンタメ界のフロイド・メイウェザー」

 今回から追加された審査員で注目度ナンバーワンはやはりオードリー・若林君だろう。規模の大小問わず、日本には数多くのお笑い賞レースがある中で、若林君が審査員席に座っているところを僕は見たことがない。

 数多くのレギュラー番組を抱え、若者に絶大な人気があり、今年の2月、東京ドームをフルハウスした。配信チケットも含めて販売数の記録も打ち立て莫大な利益を上げる。まさに「日本エンタメ界のフロイド・メイウェザー」といったところか。

 今まさに絶頂期を迎えている彼が審査員席に座る。彼は漫才師たちに何を語るのか? 見逃せない!

◆最後のひと枠をかけたサバイバルバトル

 今回も昨年同様、15時から22時10分まで7時間10分の生放送。最初に行われるのが最後のひと枠をかけたサバイバルバトル「敗者復活戦」である。ルール並びに注目のブロック分けを見てみよう。

【敗者復活戦 審査方法】

①準決勝で敗退した21組が、A、B、Cの3つのブロックに分かれて4分間漫才を披露

②会場の中からランダムに選ばれた観客500名が審査員となり1組ずつのネタ終わりで「暫定勝者」か「挑戦者」のどちらが面白かったかを審査

③各ブロックの勝者3組の中から、芸人審査員の投票数が一番多かった1組が勝ち上がる

※各組ネタは1回のみ

●Aブロック

カベポスター(吉本興業)

十九人(ASH&Dコーポレーション)

金魚番長(吉本興業)

ドンデコルテ(吉本興業)

フースーヤ(吉本興業)

今夜も星が綺麗(プロダクション人力舎/SMA)

ダンビラムーチョ(吉本興業)

●Bブロック

マユリカ(吉本興業)

家族チャーハン(吉本興業)

ナイチンゲールダンス(吉本興業)

カラタチ(吉本興業)

男性ブランコ(吉本興業)

滝音(吉本興業)

豪快キャプテン(吉本興業)

●Cブロック

シシガシラ(吉本興業)

ひつじねいり(マセキ芸能社)

例えば炎(吉本興業)

オズワルド(吉本興業)

インディアンス(マセキ芸能社)

豆鉄砲(ワタナベエンターテインメント)

スタミナパン(吉本興業)

◆敗者復活戦の審査員も大きく刷新

 お笑いファンならすぐにわかるはずだが、「女芸人No.1決定戦 THE W」の形式とほとんど同じ。ネタ披露は1回のみ。勝ち残りで各ブロックの代表が決まり、その代表から5名の芸人審査員が1組を決める形。5名の審査員はこちらである。

2020年王者・野田クリスタル(マヂカルラブリー)

2021年王者・渡辺隆(錦鯉)

2015年王者・斎藤司(トレンディエンジェル)

2017年王者・久保田かずのぶ(とろサーモン)

2022年大会・井口浩之(ウエストランド)

 野田君と渡辺君は2年連続。昨年の審査員であるアンタッチャブル柴田君、NON STYLE石田君、かまいたち山内君は決勝の審査員となったため、新たに3人が加わり、今年は歴代王者が並ぶ形となった。

 昨年の戦い、勝ち上がった「シシガシラ」から考えると大きな要素として「ライブ感」という部分は重要になる。はっきりと書くが、今年は準決勝から実力が拮抗中の拮抗。誰が決勝に行ってもおかしくないくらいの出来だった。だから本当にわからないのですが、予想させていただく。

◆オタク二人が決勝に嵐を呼ぶか?

 Aブロックはトップバッターが昨年のファイナリストである「カベポスター」から始まる。彼らは必ずクオリティの高いネタを披露してくるでしょう。「金魚番長」の出来が良かった。ここを凌げば最後の「ダンビラムーチョ」まで進むのではないかと予想。しかし、「ダンビラムーチョ」の準決勝で披露したネタは本当にバカバカしいネタである。この準決勝の会場、お客さんに対して大爆発を起こすのではないか。まさに「ライブ感」でAブロックは「ダンビラムーチョ」が制するのではないか。

 続いてBブロックは全組が吉本興業所属。こちらもAブロック同様昨年のファイナリスト「マユリカ」からスタート。「家族チャーハン」「ナイチンゲールダンス」という同タイプの漫才師をなんとかクリア。そして、まったくタイプの違う「カラタチ」との勝負、ここで僕は「カラタチ」が爆発することを期待。その勢いのまま「カラタチ」がBブロックを制すると予想する。

 最後はCブロック。こちらは昨年「敗者復活戦」を制した「シシガシラ」からスタート。A、Bと違い、このブロックは「シシガシラ」に「ひつじねいり」が勝ち、その後「例えば炎」が勝ち、そして「オズワルド」が勝つという勝者が入れ替わる形になるのではないかと予想。そして、ここで「オズワルド」対「インディアンス」という2021年最終決戦を戦った2組の戦いが再び起こる。審査員席で見守るのが2021年王者「錦鯉」渡辺君。「ライブ感」の強さから僅差で「インディアンス」が制し、勢いそのままにCブロック代表へつくと考える。

 そして、芸人審査員が決勝の舞台に送り出すのは……「カラタチ」。オタク二人が決勝に嵐を呼ぶ……となったら面白い……とこんなことを書いたが、本当にわからない。真実は15時から皆さんの目でご確認を。

 

 あと、個人的なことだが、会場の「新宿住友ビル三角広場」。僕のウォーキングコースで毎日のように通るが、最高の会場。僕も一度でいいから「ここで漫才がしたかった」と思えるくらいの会場なのだ。全組、最高の漫才を見せろ!!

◆前人未到の2連覇をかけて決勝の舞台に

 18時30分。ついに決勝大会の幕が上がる。当然、今年も順番は「笑神籤」で決まる。僕が毎年言い続けると決めていた言葉がある。それは「トップ出番に引かれるな!」という言葉。「トップ不利」。これは僕自身も経験したから言える言葉だった。

 しかし、昨年の王者「令和ロマン」がトップバッターからの優勝を成し遂げた。「最高の舞台で最高の漫才をするだけ」。これがいちばん大事なことだと僕自身が気付かされたような気がした。そんな昨年の覇者「令和ロマン」が前人未到の2連覇をかけて決勝の舞台に帰ってきた。

 ライバルである昨年準優勝の「ヤーレンズ」も2年連続決勝の舞台へ舞い戻ってきた。2022年、準決勝で敗れた2組は2023年からツーマンライブを開催。ともに切磋琢磨し努力が実り、2組とも決勝の舞台へ。

 最終決戦まで進み4対3で「令和ロマン」の勝利。「ヤーレンズ」は1ポイント差の準優勝。頭にあるのは「優勝」と「リベンジ」。最終決戦で「令和ロマン」に勝って王者になるという胸熱優勝は実現するのか? 

◆ラストイヤー2組がどんなインパクトを残すか?

 ラストイヤーは6年ぶり2回目の決勝進出である「トム・ブラウン」と遂に決勝に駒を進めた双子漫才コンビ「ダイタク」。

 6年前、独特な漫才スタイルで衝撃を与えた「トム・ブラウン」は昨年の敗者復活戦でもさらなる衝撃の漫才を披露。M-1の公式youtubeで決勝進出メンバー以上の再生回数を獲得する事態に。今年はさらに進化し、舞い戻ってきた。

 審査員がどんな顔をするのか? どんな点数をつけるのか? 「ダイタク」は集大成の双子漫才をぶつけてほしい。

 兄弟漫才師の中川家礼二、姉妹漫才師の海原ともこがどんなコメントを残すのか? 2組とも手をすべてをぶつけて卒業してほしい。

◆驚異の4年連続決勝進出を遂げた「真空ジェシカ」

 そして、僕の優勝予想は準決勝で爆発的な笑いを掻っ攫った「真空ジェシカ」を上げたい。王者「令和ロマン」の出場であまり目立たないが、彼らは4年連続の決勝進出なのである。

 移り変わりの激しい現代で4年間もクオリティを上げ続ける漫才を披露していることに驚愕する。準決勝も僕的には1位だった。「令和ロマン」と「ヤーレンズ」の萌え展開をすべて塗りつぶして「真空ジェシカ」が優勝を強奪するのではないかと予想。

◆2019年「ミルクボーイ」の再現も

  ここまで書いたが、今年は誰が優勝するか本当にわからない。初進出の「エバース」の考え抜かれた漫才も、「バッテリィズ」のアホな漫才も、「ママタルト」の力強いツッコミも「ジョックロック」の2段構えのツッコミも、すべてハマれば爆発します。2019年大会、初めて出会った「ミルクボーイ」の衝撃。同じ体験をするのは今年かもしれません。

 とにかく7時間。見続けようぜ!! 以上、センキュー!!

<文/ユウキロック 撮影/星 亘>

【ユウキロック】

1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。著書『芸人迷子』