2024年の訪日外国人客は1~11月に3300万人を突破した。日本政府観光局が2024年12月18日に発表した。これは日本政府が1964年に統計をとり始めて以来、「過去最速」のペースだ。中国人はこのうち約2割の637万人を占め、前年比201.8%と急伸している。全体の伸び率は49.5%なので、中国人の突出ぶりが際立っている。中国人旅行者数はコロナ禍の落ち込みから大きく回復し、インバウンドに拍車をかけている。個人旅行に加え、コロナ禍で制限されていた団体観光も2023年夏に解禁されたこともあって「復活」が勢いづいた。

動画投稿アプリで反日デマ拡散

ところが、2024年12月に発表された日中共同の世論調査で、中国人の対日感情の急速な悪化が明らかになった。日本に良くない印象を持っていると答えた人は87.7%に達し、昨年より24.8ポイントも増えた。印象が良くない理由としては、「尖閣諸島の国有化」や「『一つの中国』原則への消極的態度」「一部の政治家の不適切な言動」などが上位に並ぶ。

また、「日中関係は重要」と考える人は2005年の調査開始以来、いちども6割を切ったことがなかったが、今回初めて26.3%にまで落ち込んだ。調査したNPO法人「言論NPO」の工藤泰志代表は「国民間の信頼の基盤を失い始めている」と心配する。

中国の回答者の53.9%は情報源としてインターネットのSNSをあげた。中国のSNSは、デマや反日感情をあおる投稿が出回ることが多い。中国広東省で日本人の男子児童が刺殺された事件をめぐり、中国の動画投稿アプリの一つは、日中対立をあおるデマ情報などを流したとして90以上のアカウントを閉鎖している。

同時にSNSは、中国人旅行者がもっともよく利用する情報源でもある。人気の高い口コミサイト「大衆点評」の1日のアクティブユーザーは5000万人以上にのぼるという。

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「日本へ来ると好感度が増す」調査結果

じつは、中国人も実際に日本を訪れると、日本の印象が良くなるといわれる。観光庁の2023年「訪日外国人消費動向調査」によると、中国人客の99%が訪日旅行に満足し、さらに98.2%が再訪したいとの意向を示している。中国人が日本に「良い」印象をもつ理由は、2022年、2023年の日中共同世論調査によると、「日本製品の質は高い」や「日本人は礼儀があり、マナーを重んじ、民度が高い」「日本は経済発展を遂げ、国民の生活水準が高い」などが上位となり、「日本人は真面目で、勤勉で、努力家だから」や「日本の環境は美しく、自然が風光明媚で、温泉等の観光地が多い」などが続く傾向にある。こうした好評価は訪日の見聞によって育まれ、SNSによって拡散される。

中国では、かつてなく「嫌日」感情が高まっている。その理由は政治にからむもので、SNSを通じて広がっている。他方、訪日する中国人客は前年比200%を超えるハイペースで増え続けており、空前のインバウンドの主役になっている。日本にやってきて日本人と交流し、社会を見聞すればイメージが変わり、「親日」の芽が育つかもしれない。

(ジャーナリスト 橋本聡)