「パーカーおじさんはみっともない」発言で炎上した女性コラムニスト。「戦略通り」と東大生が思うワケ

―[貧困東大生・布施川天馬]―

 先日、作家の妹尾ユウカ氏の発言が物議をかもしました。

「40代以上のおじさんがパーカーを着て仕事をするのはみっともない」という論調で、これに対して実業家のホリエモンこと堀江貴文氏やひろゆきこと西村博之氏が反応し、ネット上では大激論が交わされています。

◆「パーカーおじさん」に刃を向けた妹尾ユウカ氏

 正直、今回の件は「いわないほうがお互いにとってよかった」のでしょう。本音を言って気持ちよくなるよりも、お互いに気を使って長期的な関係を構築したほうが、より利益となるはずです。

 確かに、「いい年した大人はそれなりにパリッとした格好でいてほしい」と若い女性が考えるのも自然ですし、それに対して「どんな格好をしていようが、仕事に支障はない」と反論されるのも当たり前。

 最初この件を見たとき、私は「妹尾氏はなんて実りのない発言をしているのだ」と感じました。「ビジネスシーンにパーカーを着て現れるおじさん」は、「TPOを守らずとも迫害されない権力者」と読み取れます。

 金と権力を握っているであろう「パーカーおじさん」に刃を向けても、百害あって一利なしだと考えたのです。

 ですが、これは大きな勘違いでした。彼女は確かに、今回の騒動で一定の利益を得られたのです。妹尾氏の狡猾な立ち回りに舌を巻いた理由をお伝えします。

◆炎上のメリット・デメリット

 高度にネットワークが発達した現代社会では、日夜炎上事件が頻発しています。どこでも誰かが叩かれたり、叩いたりしています。炎上が原因で精神を病んでしまう人もいます。炎上は、現代社会において、順調な社会生活を妨げる落とし穴になりうる。

 では、炎上が現代社会における大きなリスクといえるのはなぜでしょうか。

 それは、「味方がいなくなるから」でしょう。インターネット上で匿名化された記号としての人々の波に批判されれば、どのようなメンタルを持ち合わせていようとも、恐怖や後悔の念を抱くはず。まるで周りに味方がいないかのような気分にさらされて、絶望を味わいます。

 逆を言えば、「味方を確保しながら炎上する」のであれば、恐怖は軽減されるでしょう。いかに自分の意見を否定されようとも、同じくらい肯定してくれる人がいれば、前を向いて発信し続けられる。

 現代社会における発信の鉄則は、敵と味方の両方ができるように一石を投じて、波紋を呼ぶこと。自分が騒動の中心として一定の注目を得ながらも、一定のファンを獲得することができる。

◆今回の騒動で検索ボリュームが100倍に膨れ上がった

 これを踏まえて、今回の妹尾氏の発言を考えましょう。確かに、ネット記事のコメント欄は妹尾氏を叩く、おそらく中年男性の怨嗟の声でいっぱいです。

 これだけを見れば、氏の味方はほとんどおらず、孤立無援の戦いを強いられているように見えます。ですが、彼女のライブ配信はどうでしょうか。

 彼女に対して、賛同する声であふれています。賛成票を投じているのは、コメント欄を観察する限りでは20代から30代程度の女性と考えられます。

 わざわざ彼女のライブ配信を見に来る層なのだから賛同は当たり前かもしれませんが、今回の騒動によって、彼女はこれまでリーチできなかった層へアプローチすることに成功したと考えられます。

 Google検索の検索ボリューム数を相対評価で確認できるGoogle Trendsを利用した調査によれば、「妹尾ユウカ」の検索ボリュームは、2024年11月下旬と2024年12月上旬とで約100倍にまで膨れ上がっています。

 合わせて検索されるワードは「パーカー」などがあり、明らかに今回の騒動を受けてスポットライトを浴びた形となりました。

◆妹尾ユウカ氏の本当の狙いとは何だったのか

 もともと彼女のコラム内容は、明らかに中年男性層を狙って書かれたものではありません。パーカーおじさんを含む中年男性層は、最初から彼女の顧客となりえないし、おそらく彼女はここへのリーチを狙っていません。いてもいなくてもいいのでしょう。

 であれば、嫌われようが何をしようが、問題はないはずです。むしろ、今回の騒動を通じて、若年女性層への認知が爆発的に増えたでしょうから、プラスの結果といえるのではないでしょうか。

 彼女の狙いは「おじさん」を叩き、「おじさん」に叩かれながら、本当にリーチしたかったターゲットにアクセスすることだったと私は考えます。彼女の計略は、見事に成功しました。

 もしも彼女を嫌う「おじさん」にアドバイスをするのであれば、そもそも怒らず、話題に触れず、笑ってやり過ごすことが最善策だったでしょう。

 これを無視できず、真正面から組み合った時点で、負けが決定していました。「おじさん」が愚かだったというより、妹尾氏の戦略が一手先をいった。今回ばかりは、素直に負けを認めるべきなのかもしれません。

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】

1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)