公正証書遺言とは

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。作成には、遺言者の意思を証明するために2名以上の証人が必要で、遺言者、公証人、証人全員の署名・捺印も求められます。

公正証書遺言の特徴

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する公文書であり、信頼性の高い遺言書として認められます。一般的な契約書と比べて、法的な効力が強く、遺言内容の確実な執行が期待できます。

公正証書が作成される際には、遺言者本人であることを公証人が確認するため、後から「自分はこんなこと書いていない!」といったトラブルが起きる心配がありません。また、裁判などで争いが生じた場合、公正証書は強力な証拠として扱われます。

さらに、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されており、万が一遺言書を紛失しても再発行が可能です。

公正証書遺言のメリット

・法的に確実な証明力

公正証書は、法律の専門家である公証人が作成するため、遺言内容が法的に明確で、非常に高い証明力を持ちます。

・強制執行が可能

公正証書遺言には「強制執行認諾条項」を追加することで、一定の条件を満たせば、裁判を経ずに強制執行ができる力(執行力)が与えられます。これにより、支払いが滞った場合などでも迅速に対応が可能です。

・安全な保管

公正証書の原本は公証役場に保管されるため、遺言書が偽造されたり、紛失したりする心配がありません。万が一、正本を紛失しても、原本が保管されているため安心です。

公正証書遺言のデメリット

証拠力が高く、安心な公正証書遺言ですが、以下のようなデメリットもあります。

・費用がかかる

公正証書遺言を作成する際には、公証人の手数料がかかります。費用は遺言内容や財産額によって異なり、遺言者にとって経済的な負担となる場合もあります。

・作成に手間がかかる

公正証書遺言は、作成にあたって公証役場を訪れる必要があり、事前準備も必要です。また、遺言者と証人、そして公証人がそろって手続きを進めるため、自筆証書遺言より手間がかかります。

・証人2人が必要

公正証書遺言の作成には、遺言内容を確認するための証人が2人必要です。証人には親族や相続に関与する人物はなれないため、注意が必要です。

公正証書遺言の作成にかかる費用

公正証書遺言を作成する際の手数料は、遺言で相続させる財産や遺贈する財産の価額に基づいて計算されます。遺言は、相続人や受遺者ごとに別々の法律行為として扱われるため、それぞれの財産価額に応じて手数料が算定され、その合計額が公正証書作成の手数料となります。

例えば、複数の相続人や受遺者に遺産を分配する場合、それぞれの対象者に渡す財産の価額に基づき個別に手数料が計算され、その合計額が最終的な手数料になります。

具体的な手数料の計算は以下の通りです。



 

このように、遺言に含まれる財産の総額に応じて手数料が段階的に増加します。

証人の依頼方法

公正証書遺言を作成する際には、立会人として2人の証人が必要です。証人になるための特別な資格はありませんが、以下の人々は証人になれないため注意が必要です。

・未成年者

・相続人となる可能性のある人(推定相続人)

・遺贈を受ける予定の人(受遺者)

・推定相続人や受遺者の配偶者、直系血族

(広告の後にも続きます)

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言は、遺言書の内容を他人に知られたくない場合に利用できる形式の遺言です。この遺言書は、公証役場で遺言書が存在することだけを認証してもらい、内容は一切公開されません。そのため、遺言の内容を秘密に保ちながら、遺言書が確かに存在するという証明だけを行う仕組みです。

ただし、現実的にはこの形式はほとんど使われていません。理由として、遺言書が無効になるリスクや、作成後に家庭裁判所での検認手続きが必要になるなどの手間が挙げられます。

秘密証書遺言の特徴

秘密証書遺言の最大の特徴は、遺言者以外に内容を知られずに遺言を残せる点です。遺言書の存在を公証役場で認証してもらい、内容は遺言執行まで第三者に知られません。また、自筆証書遺言と異なり、パソコンで作成したり、代筆を依頼したりできるため、作成の負担が軽減されます。ただし、遺言書の保管は遺言者自身が行うため、紛失や破損のリスクに注意が必要です。

秘密証書遺言のメリット

・内容を秘密に保てる

遺言書の内容が外部に漏れず、プライバシーが守られます。

・偽造や改ざんの防止

公証人による認証で遺言の存在が証明され、偽造リスクが軽減されます。

・自筆が不要

手書きが難しい場合でも作成可能で、柔軟性があります。

・コストが比較的安い

公正証書遺言より費用を抑えられます。

秘密証書遺言のデメリット

・証人2名が必要

公証人だけでなく、2名の証人を手配しなければなりません。

・紛失のリスク

原本は遺言者が保管するため、管理に注意が必要です。

・家庭裁判所の検認が必要

遺言執行前に検認手続きが必要で、時間がかかる場合があります。