特別方式遺言とは

予期せぬ事態に備えて、急いで遺言書を作成しなければならない状況が訪れることもあります。命の危険が差し迫ったときなど、通常の手続きが困難な状況で作成する遺言書は「特別方式遺言」と呼ばれます。緊急時に対応できるよう、特別な形式で遺言を残すことが認められているのです。

特別方式遺言の種類

では、どのような状況が「特殊な状態」とされ、それに応じた遺言の種類にはどのようなものがあるのでしょうか?

一般臨終遺言とは

一般臨終遺言は、生命の危機が迫る状態、例えば病気や怪我で余命がわずかとなった場合に作成される特別な遺言です。遺言者が自ら書けない場合、証人の一人が口述された内容を代筆し、他の証人が署名を行うことで遺言が成立します。

この遺言を作成するためには、3名以上の証人が立ち会う必要があります。証人は、相続に関係のない第三者でなければならず、推定相続人など利害関係者は証人になれません。また、遺言が成立した後は、20日以内に遺言書を作成した証人が家庭裁判所で確認手続きを行うことが求められます。

この形式の遺言は「死亡危急者遺言」、「一般危急時遺言」とも呼ばれることがあります。

難船臨終遺言とは

難船臨終遺言は、船や飛行機などに乗っている際、突如として命に危険が迫った状況で作成される特別な遺言です。遺言者が自ら書けない場合、口頭で証人に遺言内容を伝え、代筆してもらうことも可能です。

遺言の作成においては、証人2名による署名と捺印が必要です。証人の選定に関しては、相続人などの利害関係者は含まれないよう注意が必要です。また、この遺言が有効になるためには、作成後に家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。

難船臨終遺言は、一般の危急時遺言と同様に、遺言の内容が裁判所で確認されて初めて効力が発生しますが、特に日数の制限は設けられていません。

この形式の遺言は、「難船危急時遺言」とも呼ばれます。

一般隔絶地遺言とは

一般隔絶地遺言は、隔離された状況にある人や、特殊な環境で生活を送っている人が作成する特別な遺言です。例えば、伝染病で隔離されている人や、刑務所に服役中の人、災害で避難生活を送っている人などが該当します。

この遺言を作成する際には、警察官1名と証人1名の立会が必要です。遺言書には、遺言者自身と立会人全員が署名し、捺印することで正式に成立します。

船舶隔絶地遺言とは

船舶隔絶地遺言は、航海中や長期間船上で仕事をしているなど、陸地から離れた環境にいる人が作成する遺言です。飛行機のように短時間の移動ではこの形式に該当しません。

この遺言を作成するためには、船長または船の事務員1名と、2名以上の証人の立会いが必要です。遺言書には、遺言者と全ての立会人が署名し、捺印することで正式に成立します。

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自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

自筆証書遺言と公正証書遺言は、形式が異なるものの、法的効力に違いはありません。いずれも法律の要件を満たせば有効であり、両方が存在して内容が矛盾する場合は、新しい方が優先されます。

どの遺言書が最適か? 公正証書遺言を推奨する理由

遺言書は、家族間の争いや混乱を防ぐために作成されます。自筆証書遺言や秘密証書遺言は形式不備や解釈の問題が生じやすく、家族に負担をかけるリスクがあります。一方、公正証書遺言は公証人が関与するため、無効となる可能性が低く、信頼性が高いです。そのため、確実性を重視する場合には、公正証書遺言が最適といえます。

遺言執行者の役割

遺言執行者は、遺言内容を実行するための手続きを担う人物です。不動産の名義変更や銀行口座の解約など、遺産分割に必要な具体的な作業を行い、遺言者の意思を確実に反映させます。特別な資格は不要ですが、未成年者や破産者は法律上なることができません。手続きの円滑化のために、専門家を選任することも有効です。

公正証書遺言作成時の注意点

公正証書遺言を作成する際、遺言者が意思能力を持つことが前提です。認知症などで判断能力が著しく低下している場合、遺言が無効になる可能性があります。

また、専門家を遺言執行者に指名することで、遺産分割や相続手続きがスムーズに進み、相続人間の争いを防ぐことができます。