親が高齢になると、「実家をどうするか」という問題に直面する人は多いです。実家じまいは、単なる不動産の売却や賃貸にとどまりません。宅内の片付けや仏壇・お墓の手配、さらには親族間の調整など、対応すべき課題は想像以上に多岐にわたります。さらに、対応を後回しにすることで、家の資産価値が大きく下がるリスクも避けられません。本記事では、スムーズに実家じまいを進めるために、事前に確認すべき5つの重要ポイントや、「手放す」場合と「保有する」場合のそれぞれのメリット、有効な実家の活用方法等について解説します。
実家じまいはどう進めたら良い?
「実家じまい」というと売却や賃貸などの不動産取引をイメージしますが、実際には宅内の片付けや仏壇の供養、お墓、親族間トラブルなど様々な課題への対応が求められます。
団塊の世代の持ち家率は全国で86.2%と非常に高く、団塊ジュニア世代の多くがいつかは実家じまいを行うこととなります。しかし、働く現役世代が課題に直面すると、実家じまいにかける時間が無いとの理由から問題を先送りにしがちです。
家は人が住まなくなると急速に損耗します。例えば相続直後に1,000万円で売れた家も、しばらく放置すると自然災害や、害獣害虫被害を受け、200万円でも売れないという事象は全国至る所で起きています。問題の先送りは所有者本人の機会損失につながります。
実家じまいをスムーズに進めるため、事前に確認しておくべき5つの事項を解説します。
①家族との話し合いはできているか?
実家じまいを進める上で最も重要なのが、家族全員の意見を尊重し、合意形成を計ることです。実家は家族の思い出が詰まった場所であり、それぞれが異なる感情を持っています。
ポイントは全員が納得できる計画を立て、役割分担を明確にすることです。将来、実家をどうして行くのか目的を明確にし、全員が納得する解決方法を模索しましょう。
②法的手続きの確認
実家じまいを進めるには、法的な手続きがあります。
実家が親の名義になっている場合、相続登記が必要です。相続手続きを完了しないと、売却や活用が進められません。不動産の名義変更を忘れずに行いましょう。
③かかる税金の確認
相続時には資産に応じて「相続税」がかかる場合があります。相続財産を明確にし、税金がかかるのか確認しましょう。
④不動産の状態を確認
実家の状態を把握し、適切な対応を検討することが重要です。
・建物の劣化状況を調査
長期間放置されている場合、雨漏りや老朽化が進んでいる可能性があります。修繕が必要かどうかを専門家に見てもらい、費用を見積もりましょう。
・土地や境界線のトラブルを防ぐ
隣地との境界線が不明確な場合、問題になることがあります。近隣トラブルは不動産の利活用に支障が出ることもあるので、事前に近隣との関係を調べておきましょう。
⑤片付けや処分
実家じまいの中でも大きな労力がかかるのが、家財の整理や処分です。片付けが進まないと家を売ることも貸すこともできません。宅内に残るものの中からご自身で使うもの、保管しておくものを整理しておくことが大切です。
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相続した実家はどうするか
実家じまいは先ず不動産を「手放す」か「保有する」のかを考えることからスタートしましょう。その方向性で、行う作業、かかるコストは変わります。
「手放す」ことのメリット
維持管理の負担軽減できる
実家を維持するには、固定資産税や修繕費、光熱費などのランニングコストが発生します。手放すことで、これらの費用を削減できます。
管理の手間を省ける
空き家の管理は思った以上に大変で、定期的な清掃や庭の手入れ、雨漏りや害虫の対策が必要です。これらの負担をなくすことができます。
空き家にしておくリスクを回避できる
老朽化による危険性の回避ができます。空き家のまま放置すると建物が劣化し、倒壊や害虫被害のリスクが高まります。手放すことで、こうしたリスクを防ぐことができます。
防犯面のトラブル回避
実家を空き家にすると、空き巣や不法投棄に遭うリスクが高くなります。特に管理がされていない空き家については、注意が必要です。
法律や近隣トラブルの防止
空き家は近隣住民とのトラブルにも発展することがあります。自治体から是正勧告を受ける可能性もあります。適切に処分することで、トラブルを未然に防げます。
売却収入の獲得
実家を売却することで、まとまった資金を得られることもあります。これを別の用途に活用することで、家計や将来設計が豊かになります。
相続税や負債の補填
売却した資金を相続税やその他の支払いに充てることも可能です。
家族への負担を軽減
実家じまいの先送りは後に家族へ負担をかける事になります。所有者が元気なうちは良いのですが、万が一相続が発生すると、所有権は配偶者や次の世代に引き継がれることになります。早めに対応することで、家族への負担をかけないで済みます。
「保有する」メリット
資産としての価値保持
実家の土地や建物が将来的に値上がりする可能性がある場合、保有し続けることで資産価値を保持できます。特に都市部や開発計画のある地域では、将来的な投資価値が高まることもあります。
相続税対策
売却すると現金化され、相続税の対象になりやすくなりますが、不動産を保有している場合は、評価額が現金より低くなるため、相続税対策になることがあります。
将来的な利用の可能性
家族や親戚が将来利用する可能性がある場合、保有しておけば柔軟に対応できます。子供世代が住む、セカンドハウスとして利用するなどの選択肢を残せます。
賃貸や活用の計画
将来的にリフォームして賃貸物件にする、または商業利用するなどの活用方法も検討できます。
税制上のメリット
居住用住宅の場合、固定資産税が軽減される場合があります。適切に管理しておけば、この優遇措置を継続的に受けることが可能です。
また、不動産を長期間所有していると、売却時の譲渡所得税が軽減される特例があります。長く持つことで将来の税負担が軽くなる場合もあります。