実家じまいを始めるタイミングは?
家は住む人がいなくなると、急速に損耗します。それは、自然災害だけでなく害虫や害獣が住みつくなど、さまざまな原因が想定されます。
親の介護施設への入居や、親が亡くなり相続が発生した場合は、早めに実家じまいを検討することをお勧めします。実家を使わなくなった直後は、問題意識が高く早めに解決したいと行動を起こしますが、先送りにしてしばらく放置が続くと人は動くのが億劫になり、解決にむけた行動は起きなくなります。更に、庭には草木が生い茂り、損耗して行く実家を見ると更にやる気を削がれ完全放置状態になるのです。
また、長年放置しボロボロになった家は、再生させるのにもお金がかかるため、現実的に「壊す」しか選択肢がなくなります。更地にして売却できる地域であれば良いのですが、同様の空き家が点在する地域や売地だらけの地域で更地を増やしても、引き受け手は見つかりません。従って手放すことは困難になり、固定資産税などの維持費を払いながら保有し続けなくてはいけません。
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実家じまいを失敗しないためのコツ
実家じまいのために行わなければならない手続きは多岐に渡ります。
売買や賃貸、管理を含む利活用(以下、利活用という)の前にやらねばならない事前準備、そして、実際に不動産の利活用までのコツを解説していきます。
宅内の片付け リユース・リサイクルの活用
宅内に生活品が残置されている状態では、不動産を売ることも、貸すこともできません。
実家じまいの第一歩は片付けになります。親が残した生活品は不要だからと言って、全てゴミとして扱ってしまうと、多額の処分代がかかります。
宅内に古くても使えるものはたくさんあります。リユース・リサイクルを活用することで、ゴミを減らす事をお勧めします。
業者の選び方
遺品整理に関して、依頼者と業者との間でのトラブルは絶えません。その原因は、請求に関すること、作業の内容、物の窃盗などさまざまです。また、処分費としてお金を支払っているにも関わらず、自宅の生活ゴミで捨ててしまうことや、中には不法投棄し摘発されている業者もいます。その様なトラブルに巻き込まれない様に、下記の3点に注意してください。
遺品整理業を行うのには特定の資格はありません。しかし、残置物の処分や運搬、リユースにはそれぞれの資格が必要です。また資格が無く操業している業者は、それぞれの業法違反(違法行為)に当たります。事前に資格があるかは最低限確認しましょう。
・廃棄物に関する資格:一般廃棄物の収集運搬許可(市区町村管轄)
・リユース品に関する資格:古物商 (警察管轄)
・安い見積もりには要注意
誰もが片付けにお金をかけたくないので、安い業者に依頼したいという気持ちがあります。しかし、作業を行うためには最低限のコストがかかります。主には人件費、運搬費、処分費です。予め、安い見積もりを出して仕事を受注し、請求時にかかった追加費用を請求する業者は少なくありません。
・見積もりの表記に注目
見積もりがすべて1式になっている業者には要注意です。作業員の数(人件費)、運搬費用、処分費は、残置物の量で決まります。また、道が狭く大型のトラックが入れないなど、搬出経路でもその費用は変わります。現地調査はしたけど、物量を測らず、大雑把に1式で金額が表記されている見積もりには要注意です。思った以上にコストがかかったなどの理由で追加費用を請求される場合があります。
仏壇や神棚の供養
宅内に仏壇や神棚が残り、実家じまいを行えない方もいます。適切な方法で供養し、処分する様にしましょう。
(1)宗派を確認
仏壇の供養方法は宗派によって多少異なる場合があります。自身の家の宗派を確認し、それに従った供養を行うことが大切です。
(2)僧侶に依頼する
お寺での供養、もしくは自宅での供養の場合は、僧侶に自宅に来てもらい、仏壇の前で供養してもらうことも可能です。
(3)魂抜き(閉眼供養)
供養の際には「魂抜き」という儀式を行い、仏壇や仏具に宿る仏様や先祖の霊を抜き取る手続きをします。これを行わないまま仏壇を処分するのは避けましょう。
相続登記(被相続人からの名義変更)
実家の相続登記を行わないと、不動産の所有者が故人のままとなり、売却や担保提供ができなくなります。複数の相続人がいる場合、登記を行わないと共有者間でトラブルが発生する可能性があります。2024年の法改正により、相続登記が義務化されました。これにより、相続登記を怠った場合に過料(罰金)が科されることがあります。
相続登記の基本的な流れを解説します。
1.相続人を確定する
2.遺産分割協議を行う
遺産分割協議は遺言書の有無で異なります。
○遺言書がある場合
公正証書遺言や自筆証書遺言がある場合、それに基づいて相続登記を進めます。
○遺言書がない場合
相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成します。この書類は相続登記の際に必要です。
3.登記に必要な書類を揃える
・被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書(または遺言書)
・登記簿謄本(法務局で取得)
・固定資産評価証明書(市区町村役場で取得)
・相続人全員の印鑑証明書
4.登記申請を行う
登記申請書の作成は、ご自身でも可能ですが、司法書士への依頼が正確です。申請は不動産が所在する地域を管轄する法務局に行います。
5.登記費用の支払い
登記は依頼した司法書士報酬の他に、登録免許税が必要です。
実家の土地や不動産を活用する
実家の売却(手放す)
実家の売却を進める時に大切なのは、具体的な計画です。不動産を売却したらそのお金が全て手元に残るわけではありません。例えば、更地で売却する場合には、不動産の仲介手数料の他に、片付け、解体、測量、登記に費用がかかります。
売却の際には不動産を高く売る事を考えがちですが、高く売ればお金が多く残るかというとそうではない事もよくあります。
実家の有効活用(保有する)
実家の活用方法には様々あります。建物を活かす活用法としては一般賃貸、介護や福祉施設、飲食店、オフィス、宿泊施設などへの転用も考えられます。また建物を解体して月極や時間貸し駐車場、借地、太陽光パネル用地などもあります。
地域の需要にマッチした活用をするのは前提ですが、共通して言えることとしては収支計画を組んで活用方法を決めることが大切です。例えば、想定家賃が6万円の物件を貸すために300万円のリフォームをかけた場合には、投資回収には4年以上かかることになります。しかも、満室経営が続く前提の話で、途中退去が発生すると回収期間はさらに長くなります。
また、賃貸物件を運用する際には、固定資産税や不動産業者への管理費、修繕積立金などがかかるので収支は更に悪化します。ほとんどの場合、先行投資の負担があるので、よく考え進まなければ、事業の失敗を招くこととなります。