「フリーランス新法」は「下請法」と何が違う?元東京国税局職員のライターがわかりやすく解説

 フリーランスで仕事をしている人は、組織の中にいる人よりも立場が弱いものです。そのような立場の弱さから理不尽な対応を受けたという人もいるかもしれない。とはいえ、フリーという立場から、クレームを言うことはなかなか難しいのがこれまでの現状でした。

 そのようなフリーランスの立場を守ろうと、2024年11月に「フリーランス新法」が施行されました。

 この法律でフリーランスの人たちはどのように変わるのでしょうか?

 そこで、『新しいフリーランスの歩き方』を上梓した元東京国税局職員でフリーライターの小林義崇氏に、「フリーランス新法」について教えてもらいました。

(この記事は、『新しいフリーランスの歩き方』より一部を抜粋し、再編集しています)

◆不利な立場にあるフリーランスの人たちを守る法律がある

 フリーランスの多くは、クライアントから仕事を受注する立場にあるため、どうしても力関係で不利な状況に置かれがちです。

 きちんと仕事をしたのに、クライアントの都合で代金を払ってもらえなかったり、後から仕事の条件を変えられたりすると、大変困ってしまいます。

 このような問題からフリーランスを保護する法律として、下請法というルールが設けられています。

◆下請法はインボイス制度とも関係する

 下請法は、発注側に対していくつかの禁止行為を設けており、納品物を受け取ることを拒否したり、報酬の支払いが遅れたりすることなどを禁じています。

 先ほど説明したインボイス制度も下請法と関係があり、たとえばインボイス制度を理由として一律に報酬から10%減額するような措置は下請法違反です。

 僕もかつて、ブックライティングの仕事でほぼ1冊分の原稿を書き終えたにもかかわらず、制作側の都合で発売が取りやめとなり、報酬が支払われないことがありました。その際に下請法の話を出しながら交渉を行ったところ、報酬の一部を支払ってもらえました。

◆フリーランス新法と下請法の違い


 ただし、下請法の規制を受けるのは資本金1000万円を超える事業者に限定されます。そのため、資本規模が小さなクライアントから受注をした場合は、下請法による保護を受けることができません。

 こうした状況を受け、2024年11月1日から、新たに「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス新法」)が施行されます。

 フリーランス新法は下請法と内容が重複する部分も多いのですが、資本金1000万円以下の事業者も規制を受ける点が大きなポイントです。そのため、小規模事業者などから仕事を請け、下請法の保護を受けられないときも、フリーランス新法が助けてくれる可能性があります。

 さらに、フリーランス新法には、下請法にはない、「フリーランスの就業環境の整備」というルールが盛り込まれています。

「子どもの急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間延期したい」といった申し出があれば、クライアントは納期を変更しなければならないことが法律上求められるようになったのです。

◆トラブル解決に専門家の助けが必要なときはどうすればいい?

 このような法律の知識を使って、フリーランスが自分でトラブルを解決できれば一番なのですが、専門家のサポートが必要になる場合もあるでしょう。

 僕も加入しているフリーランス協会の会員になると、年会費1万円でさまざまな特典を使えるのですが、そのひとつに「フリーガル」という保険サービスがあります。

 フリーガルは、フリーランス向けの報酬トラブル弁護士費用保険で、報酬未払いなどの法的トラブルに巻き込まれた際に、弁護士費用をカバーすることを目的としています。

 年間保険料や自己負担なく、1件あたり70万円までの弁護士費用をサポートしてくれるので、こういったサービスも有効に活用するといいでしょう。

<文/小林義崇 構成/日刊SPA!編集部>

【小林義崇】

2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を辞職し、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、お金に関するセミナーを行っている。『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版刊)、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社刊)ほか著書多数。公式ホームページ