現代人の多くが使用する「LINE」。ちょっとしたメッセージの文面が夫婦間のコミュニケーションに響くこともあるようです。本記事では、離婚カウンセラーである岡野あつこ氏の著書『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室』(講談社)より一部を抜粋・再編集し、具体的な事例とともに離婚の原因になりかねないLINEの使い方について解説します。
カチンとくるLINE
LINEは便利ですが、書き方に気をつけないと、トラブルの原因にもなります。
夫婦関係の改善プログラムの一環で、メールやLINEの書き方を指導していますが、「カチンとくる書き方」にしばしば遭遇します。相手から見ると不快なメッセージになっているのに、自分では気づいていないことも多いようです。次に示すのは、私が実際に添削したLINEメッセージの例です。
別居中の夫にLINEを
相談者は50代の女性、夫とは別居中で、娘がいます。夫は家に生活費を必要最低限しか入れていない状態です。娘が留学するので、入学費用を振り込んでもらうため、別居中の夫にLINEを送りたいと相談があり、こんな文面が送られてきました(名前は仮名)。
「加奈がイギリスに留学するにあたり、入学金、授業料などを振り込む必要があります」
「〇月〇日の〆切りまでに振り込まなければ取り消しとなります。ネット振り込みには対応してなく、窓口での振り込みとのことです」
「以前、加奈が高校に入学するときは、一旦私の口座に振り込みをしていただいてから私が学校に振り込んだ経緯があったので、今回お忙しい浩一郎さんに銀行の窓口に並んでいただくのも気が引けるのでご相談しています」
以降は金額の内訳の説明が長々と続きます。みなさんはどう思われるでしょうか。ぱっと見た印象として、夫婦間のやり取りにしては、少し堅苦しい気がします。しかも、どことなく高飛車な感じさえ漂っています。
まず書き出しの、「入学金、授業料などを振り込む必要があります」という書き方が問題です。ビジネスメールならこれでもいいでしょうが、夫婦のメッセージにしては少々事務的すぎて、相手への配慮や、気遣いに欠ける印象があります。次に、「お忙しい浩一郎さんに銀行の窓口に並んでいただくのも気が引けるので」の部分も、ちょっと嫌味な書き方です。この夫婦はすでに別居していて、実は夫は愛人と暮らしています。そのため、「お忙しい浩一郎さんに」と書くと、「(愛人と遊ぶのに)お忙しい浩一郎さんに」という嫌味だと取られかねないのです。夫が読めば気分を悪くするでしょう。
もちろん、ケンカするつもりなら、この書き方でいいのですが、この場合は何とか夫の機嫌をそこねず、娘の留学費用を振り込んでもらうのが目的です。そのために送るLINEの文面なので、嫌味に取られかねない表現は避けるのが無難でしょう。
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夫へのお礼LINEも恐怖
その後、夫が入学費用を振り込んでくれた後で、妻が送ろうとしたお礼のLINEも、これはカチンとくるだろうという書き方でした。
海外留学ですから、学費もそれなりの金額です。大金を振り込んでもらったのは間違いないのですが、「こんなお金」という言い方はいささか嫌味に聞こえます。「こういうお金はポンと払えるのに、なぜもっと生活費を入れてくれないんですか」という「嫌味」が、読みようによっては、行間に漂ってきそうです。
本人はあくまで、「約束通りお金を振り込んでくれてありがとう」とだけ言いたいのですが、こんな文面を送ると逆効果になってしまいかねません。結局、私はどうアドバイスしたでしょう。
嫌味な書き方にならない「ちょっとしたコツ」
まず、振り込み依頼のLINEを次のように添削しました。
嫌味なニュアンスはできるだけそぎ落とし、要件だけ端的に伝えるようにしました。また、お礼のLINEは次のように添削しました。
最後の「涙」は絵文字です。どうでしょうか。このほうが当初の文面よりも、ぐっと好印象ではないでしょうか。