スイーツ界の巨匠 ピエール・エルメ氏にも認められた吉田守秀シェフが、2013年にパリでオープンしたパティスリー「MORI YOSHIDA(モリヨシダ)」。2024年11月にはついに東京・中野に日本で初めての路面店を開き、今年一と言っていいほどの話題を呼んでいます。

そんなお店で一番人気を誇るスイーツが、フランスの国民的お菓子『Flan(フラン)』。パリの優れたフラン10選にも選ばれるそのフランの秘密に、吉田シェフへの独占インタビューで迫ります。

吉田シェフの“本物のフランス菓子”。「MORI YOSHIDA」のフランとは

吉田シェフが作るお菓子のなかでも、特に注目を浴びる『Flan vanille(フラン ヴァニーユ)』。パリの中でも至高のフランのみを集めた祭典・フランフェスティバルで販売されると、あまりの人気で午前には完売。フランスの有名製菓雑誌「Fou de Pâtisserie」に「モリ ヨシダが、フランを大衆向けのものから高級なお菓子へと変えた」と評されるほどの反響を呼んでいます。

そもそもフランとは、日本人になじみの深いカスタードが主役のお菓子。生地は軽く、優しい甘みに、華やかにバニラの香りが広がります。伝統のもと、ブリゼ生地(甘みの少ないパイ生地)にカスタードのアパレイユ、と王道の構成に。じっくり火入れされたアパレイユの美しい断面からは、目を離せない気品高さを感じます。


吉田守秀シェフ

「MORI YOSHIDA」オーナーシェフである吉田守秀氏は、地元である静岡県でケーキ店「パティスリー・ナチュレ・ナチュール」を営む間に「TVチャンピオン2」のケーキ職人選手権で2年連続優勝。渡仏し名店での勤務を経た後、パリの高級住宅地・7区で「MORI YOSHIDA」をオープンします。

現地の大手テレビ局によるコンクール番組「LE MEILLEUR PATISSIER:LES PROFFESIONNEL」でも2年連続チーム優勝を果たし、ピエール・エルメ氏から絶賛。フランス中で高い評価を受け、「フランス人でないからこそ、客観的なアプローチができる」と話すシェフが作るフランは、現地の粉や乳製品、文化の“真ん中”に佇む味にこだわり、この国で広く愛されるスイーツに。

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フランスで出会ったフラン。“また食べたくなる”味にこだわりを

今では、そのフランで多くの人を魅了する吉田シェフ。じつは、初めはそこまで好きなお菓子ではなかったと話します。

吉田シェフ「22歳のときにフランスに行き、地方のお菓子屋さんで働いていました。お昼に近くのお店のキッシュを食べ比べをしていたある日、そのキッシュと同じような形と大きさで、中にカスタードクリームが入っているお菓子を見つけたんです。それがフランでした。

“フランってどういう意味?”と聞いたら、スペイン語でプリンだと教えてくれて。型に入っているプリンがあるんだ!というのが、最初の衝撃でしたね。

初めて食べたときは、何の変哲もないお菓子で、そこまで好きではありませんでした。しかもフランスのサイズなので、日本人の感覚で考えると1カットがかなり大きい。それでも不思議とまた食べたくなる。気づくと、また食べていたんです。

その理由は、ほっとするその「やさしさ」だと感じました。フランを求めて多くのフランス人が列をなすほど、買い求めるのは「フラン」というお菓子がフランスの文化や生活に根付いているからなのだと気づきました。

だからこそ基本に忠実に、しっかりと生地を焼いて、アパレイユはほっとする味に。朝にMORI YOSHIDAのフランを見つけて“ラッキー”と思ってもらえるような、身近な食べ物でありたいと思いながら作っています」