消費者庁は12月12日、自転車用ヘルメットを標ぼうする商品の販売事業者3社に対し、景品表示法に基づく措置命令を行ったと発表した。
ヘルメットめぐり3社が措置命令受ける
消費者庁から景品表示法に違反するとして措置命令を受けたのは、蔵前製薬(東京都目黒区)、インフィニティ(東京都豊島区)、クロマチック・フーガ(福岡県太宰府市)の3社。
消費者庁によれば、3社のうち蔵前製薬とインフィニティの「キャップヘルメット」、クロマチック・フーガの「ハット型ヘルメット」について、欧州連合(EU)の安全規格「CEマーキング
」の認証に適合するものであるかのように表示していたと指摘した。
そのうえで、3社が扱っていた商品には自転車用ヘルメットに関するEU安全基準や規格に適合するものはなく、3社に対して再発防止策の徹底などを求めた。
日本貿易振興機構(JETRO)によると、CEマーキング
とは対象製品が分野別のEU指令や規則に定められる必須要求事項に適合したことを示す規格をいう。おおまかな事項は安全性に関連するものだが、最近ではCEマーキングによって環境性能への適合を宣言することも求められているとしている。
今回措置命令を受けた3社は、安全基準の認証を受けていると表示することで、商品の安全性をPRしたかったとみられる。また国が道路交通法を改正し、2023年4月からすべての自転車利用者は自転車乗車用ヘルメットを着用する努力義務を課されることになった。3社の商品の説明には、ヘルメットの着用努力義務化に関する表示も見られたことから、「努力義務を課されたため新しくヘルメットを買おう」と考える消費者に対するアプローチ効果を期待した背景もあったのかもしれない。
「努力義務は義務ではない」ヘルメット着用進まず
今回、ヘルメットに対して設けられた「努力義務」。これについて参議院法制局は、「違反に対する罰則を規定せず、『努めなければならない』と定めるものを努力義務といい、強制力がない以上、限界があるのもまた事実」と指摘している。
東京都が実施した令和5年度「自転車等の安全利用に関する調査」の調査結果
(都内在住の18歳以上の自転車利用者1000名に実施)によると、自転車ヘルメットを「着用している」と回答したのは全体の14.5%で、「時々着用している」との回答は12.5%だった。一方、「着用していない」と回答したのは全体の73.0%で、約7割の自転車運転者がヘルメットを着用していない現状が明らかとなる結果となった。ヘルメットを着用しない理由については、「着用が面倒だから」が全体の49.5%で最多。次いで「『努力義務』であり『義務』ではないから」との回答が48.9%などとなった。
また、au損保が実施した自転車利用時のヘルメット着用率調査
(全国の自転車利用者20歳から69歳の男女1万5381名に2024年1月実施)によると、自転車を利用する際にヘルメットを着用するか聞いたところ、「いつも着用している」と回答したのが全体の12.5%、「ときどき着用している」と回答したのは9.1%で、合わせると21.6%だった。反対に「着用していない」と回答したのは全体の35.9%、「所有していない」が42.5%と約8割がヘルメットを着用していなかった。着用しない理由では、「購入費用が負担」と回答したのが「着用していない」「所有していない」回答者の26.6%と最多だった。
自転車利用中死亡での損傷部位、最多は「頭部」
警察庁によると、自転車に乗っていた際に死亡した人のうち、損傷した主な部位は「頭部」が53.9%で最多。次いで「その他」(顔や腹部など)が19.1%だ。着用状況別でもヘルメットを着用していた際の致死率は0.31%、非着用時の致死率は0.57%と約1.9倍も異なる結果だったという。
ヘルメットという道具は、万が一の際に自らの命を守ってくれる存在だ。しかし、「努力義務だから」などの理由で着用率が上がらないのも事実。どうすれば着用率を上げ、将来あるかもしれない「義務化」に備えることができるのか。身近な存在である自転車をめぐる議論は深まるのだろうか。