兄弟姉妹が相続人になるケースとその相続割合

兄弟姉妹が相続人となるのは、被相続人(亡くなった方)に配偶者、子供、孫、親、または祖父母がいない場合です。この場合、相続財産は兄弟姉妹の人数で均等に分けられます。

ただし、被相続人に配偶者がいる場合、相続割合は異なります。配偶者が常に一定の割合を相続し、残りの財産が子供やその他の相続人に分配されます。

相続には順位があり、配偶者がいる場合は常に最優先されます。その次に子供、直系尊属(父母や祖父母)、そして兄弟姉妹が続きます。添付の表を参考にしてください。



 

以下の事例を通して、兄弟姉妹間で相続トラブルに発展してしまう経緯を、具体的に見てみましょう。

実際のトラブル事例

相続関係図



 

相続人

・長男(離婚後、実家暮らし)

・長女(20年前に結婚し、県外に家を建て居住)

・次女(15年前に結婚し、県内に家を建て居住)

父の財産

・自宅不動産:評価額1,500万円(取得時)

・預貯金:1,000万円

本件の特徴

・遺言書はなし

・姉妹はそれぞれ自宅を所有しており、不動産を相続する必要性を感じていない

・長男は実家で父親の介護を担当していた

姉妹の要望

預貯金のみの分配では不公平であり、自宅を売却して現金化し、均等に分けてほしいとの主張。

トラブルの詳細と経緯

5年前、母親が肺がんで亡くなるまでの1年間、姉妹は兄に対して「私たちが介護するので心配しないで」と伝えていました。そのため、兄は母親の介護を任せていたのです。しかし母親の死後、父親が心臓の持病を悪化させ入退院を繰り返すようになると、姉妹は一切協力しなくなりました。

兄が状況を尋ねた際、姉妹は「男親の介護は何かと面倒だから無理」と答えました。この対応に兄は驚きつつも、姉妹が家を建てる際に父親から資金援助を受けていたことや、他の恩恵を受けていた事実を思い返しました。その上で再び協力を求めましたが、姉妹は取り合いませんでした。

兄は訪問看護やケアマネジャーの助けを借りながら1年間の介護を続けましたが、心身共に疲れ果てる中、父親は亡くなりました。その直後、姉妹は兄に「遺産の話を進めましょう。もちろん私たちも相続する権利があるから」と提案。これを聞いた兄は、怒りよりも虚しさを覚え、姉妹との縁を切ることを決意しました。

解決策

姉妹は結婚後、盆や正月には実家に帰ることもありましたが、子どもができると家族との時間を優先するようになり、実家の近くに住む次女でさえめったに帰らなくなりました。その結果、兄と姉妹の間の会話はほとんど途絶え、兄は2人との縁を切ることさえ考えるようになっていました。

一方、父親が余命半年と診断された頃から、兄はほぼ毎日病院に泊まり込み、父親との時間を大切に過ごしていました。その中で、父親が語った言葉を一つ一つノートに書き留めていきました。

父が残した言葉

・病気になり迷惑をかけているが、子どもたちが幸せになることをいつも願っている。

・子供たちにはお金のことで苦労してほしくない。

・親が亡くなった後は、3人仲良く助け合ってほしい。

・長男には墓と家を引き継いでもらい、親戚付き合いも任せたい。

・家族みんなが笑顔で過ごせることを望んでいる。

・孫の成長を楽しみにしている。

・わずかな財産しか残せないが、揉めないで、みんな元気でいてほしい。

解決に至る経緯

父親の言葉を心に刻んだ兄は、姉妹に対してこれらのメッセージを丁寧に伝えました。父親と疎遠になっていた姉妹も、兄の話を聞く中で、父親の考えや気持ちを深く理解し、反省の念を抱くようになりました。そして、兄と姉妹は少しずつ和解の道を歩み始めたのです。

遺産相続についても、兄は姉妹の状況を考慮した提案を行いました。父親の意向を尊重しつつ、姉妹の納得を得られる形で話し合いを進めた結果、遺言書がなくても円満な解決を迎えることができました。

現在では、親の命日やお彼岸には兄と姉妹が揃ってお墓参りや仏壇に手を合わせ、家族としての絆を取り戻しています。

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兄弟姉妹間の遺産相続トラブルを避けるための対策とは

被相続人が遺言書を残しておけば、その内容に基づいて相続手続きを進めることが可能です。

そのため、遺産相続の手続きをするときに法定相続人同士で話し合いをする必要はありません。したがって、被相続人が遺言書を残しておけば、法定相続人同士の仲が悪くても、遺産相続手続きのトラブルを回避できます。法定相続人とは民法で定められた被相続人の財産を相続できる人です。

また、兄弟姉妹で認知や養子により相続人になる場合もあります。兄弟姉妹でも普段から所在地や遠方でも生存確認など連絡先の交換もしてコミュニケーションをとることも大事です。