自分らしく過ごす時間から、自分の得意分野がわかる
――「行きつけの飲み屋」なら私も持っていますよ。しかし、5人に1人しかサードプレイスを持っていないことが不思議です。残りの5人に4人は、自宅と職場の往復だけということでしょうか。
朝比奈あかりさん おっしゃる通り、ごく当たり前の場所・人間関係というものもあると思うのですが、サードプレイスの定義としてポイントとなるのは「自分らしく過ごせる居心地のよい場所」であることです。
自宅や職場とは異なり、役割や責任から「解放」される場所であるため、利害関係のない純粋な交流が可能です。そういった意味で「解放感」があることも重要な要素です。
また、サードプレイスを持つ人が少ない理由としては、現代社会の忙しさや、その重要性に対する認識不足が考えられます。多くの人が仕事や生活に追われ、サードプレイスを見つける時間や機会が限られているのかもしれません。
――サードプレイスを持っている人が、働くモチベーションが高い理由はズバリ何でしょうか。
朝比奈あかりさん 持っている人は、持っていない人に比べて、自己理解度が高い傾向にあることが関係していると考えられます。
サードプレイスでの活動のなかで自分らしく過ごす時間があり、自身が何を好むか知りやすい可能性があります。また、それがコミュニティーだった場合、コミュニケーションのなかで自身の得意なことも知りやすいと考えられます。
自分の好きなことや得意なことを理解しているからこそ、仕事にも得意なことを生かせたりするなど、仕事にもよい影響がある可能性があります。
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週に1度カフェで読書、月に1度趣味の集まりに参加…まずは小さな一歩から
――しかし、私生活の満足度もあがるのはどういうわけですか。
朝比奈あかりさん 持っている人は、持っていない人より「仕事も私生活もどちらも満足」の割合が高い傾向にあります。ここで注目したいのは、私生活の満足度だけが上がるのではなく、仕事の満足度も同時に上がるということです。
「仕事のみ」の満足度と、「私生活のみ」の満足度を比較すると、サードプレイスの有無別ではあまり変わりません。つまり、サードプレイスの活動が、仕事と私生活を合わせたワークライフバランスの改善に寄与している可能性があるわけです。
――なるほど。サードプレイスを持っていると、いいことづくめですね。どうすれば持てるようになるのでしょうか。アドバイスをお願いします。
朝比奈あかりさん まずは、サードプレイスを持つことが有益であると知っていただくことが第一。その利点は多岐にわたります。たとえば、そこでのリラックスした時間がストレスを軽減し、心身の健康を保つ助けとなります。
また、そこでの交流によって自己理解が深まり、新たな視点やアイデアをもたらし、仕事における創造性や効率性を高めることも期待できます。最初から完璧なサードプレイスを見つける必要はありません。まずは小さな一歩から始めてみるのがよいでしょう。
週に1度カフェで読書をする、月に1度趣味の集まりに参加する……。少しずつ自分のペースで進めていくことが大切。年末年始、まとまった時間が取れる方もいるかと思いますので、ゆっくり体を休めながら、自身の好きなことや得意なこと、キャリアで何を大切にしてきたか振り返る機会を作るのはいかがでしょうか。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
朝比奈あかり(あさひな・あかり)
マイナビ社長室 キャリアリサーチ統括部キャリアリサーチラボ研究員
2016年中途入社、「マイナビ転職」の求人情報や採用支援ツールの制作に携わる経験を経て2020年に現職へ。
専門・研究分野:中途採用領域全般、正社員の働き方、転職と賃金の関わり、キャリア自律など。