“80代の男性”と“70代の女性”が同じ部屋で…介護士が見た「施設内での恋愛事情」――仰天ニュース傑作選

2024年の大反響だった記事をピックアップ! まだまだあるジャンルに収まらない大人気記事はコチラ!(初公開2024年2月17日 記事は取材時の状況) *  *  *

介護士として7年ほど従事したライターの「さおやさおだけ」です。介護士時代には介護付き有料老人ホームと訪問介護という2つの現場で働き、国家資格である「介護福祉士」も取得。現場で働くなかで、さまざまな入居者・利用者の方と出会ってきました。

今回は、私が実際に体験した中でも特に強烈だった体験をお届けします。年齢を重ねると誰しも老人となり、何らかの場面で誰かの手を借りる必要が出てきます。その際に、今回紹介するような行動を取らないようにしたいものです。

◆1.介護士の股間を触る老人

これは、新人として介護付き有料老人ホームで働き始めたばかりの頃の話です。右も左も分からず、先輩に教わりながら必死に仕事を覚えているところでした。そんな中、女性入居者Aさんの居室を訪れた際のこと。近くに寄った際、突然股間を触られたのです。一瞬、何が起きたのか分かりませんでした。

とっさに「やめてください!」と言いましたが、Aさんは居室を訪れるたびに触れようとするようになり、さらに暴言まで吐くようになりました。先輩職員に相談し、他の職員が対応できる時は変わってもらうなどしましたが、そもそも介護士は多くの施設で人手不足。

やむなく行かざるを得ないこともあり、当時20代前半だった私はかなり悩みました。その後、仕事に慣れ強く注意できるようになるにつれてセクハラされる機会も減っていきました。

周囲の人からの話やニュースなど、介護士に対するセクハラの話を時折聞きます。ただでさえ介護士の数が足りない施設が多い中で、セクハラを原因に人数が減っていくこともあるのです。

◆2.介護士の性別で対応が変わる老人

「同性が介護をすべき」という意見を時折耳にします。異性から介護されることに抵抗がある、という方の気持ちは分かります。ただ、介護士の人数は限られており、常に希望通りにできるとは限りません。そして、同性の話を聞いてくれない場合もあります。

ある程度は自分自身で行動できるものの、介助が欠かせない女性入居者Bさん。ある日、Bさんの居室に行っていた女性の同僚から「代わってほしい」と頼まれました。理由を尋ねると「入居者の方が全く動いてくれなくなった」というのです。ところが、私が代わりに居室に向かうと、いつも通りで……。

あとで同僚に詳しく聞くと「あなたの話は聞かない!」と言ったきり、いくら話しかけても見向きもしなくなったというのです。結局、Bさんはその同僚だけでなく、同性=女性職員の言葉に一切耳を貸さなくなりました。

一方で、男性職員の話であればそれまで通りに聞いてくれます。そのため、自ずと男性職員が対応することが増えていきました。何がスイッチとなったのか原因は分からないままです。

◆3.異性の部屋に出入りする老人

介護施設内での入居者同士の恋愛模様は珍しいものではありません。僕が働いていた施設でも複数ケースあり、人間は何歳になっても恋愛する生き物なのだなと感じていました。けれど、だからといってあっさり容認するわけにはいきません。介護施設は共同生活の場であり、大っぴらな行動をされると困ります。他の入居者からの苦情に繋がるためです。そして、介護施設には1人で入居していても、既婚者の方も多くいるのです。

80代の男性入居者Cさんと70代の女性入居者Dさんは、2人でいることが多いなあと職員が気付いた時には、すでに恋愛関係が始まっていました。共同スペースで会話する程度であれば構わないのですが、その思いは強くなったようで、頻繁にDさんの居室に入ろうとするようになっていきました。一方のDさんもまんざらでもない感じで……。

他の業務も多いため常に監視しているわけにはいきません。Dさんの部屋で、2人きりでいる姿を何度か発見しました。注意を繰り返す度に、双方ともに徐々にストレスを抱えるようになってしまいました。そしてある日、注意した職員に対してCさんは「何が悪いんだ!」と激怒。恋愛にのめり込んだ2人は他の入居者とのコミュニケーションが減っていき、2人きりの世界に入ってしまっていました。

恋愛が悪いわけではありませんが、介護施設はあくまでも多くの人たちが共に暮らす生活の場。“大人”だからこそしっかり自重してほしいものです。

◆4.細かすぎる老人

4つ目は、訪問介護でのお話。訪問介護とは、自宅などで生活する利用者のもとを訪れて、滞りなく生活を送れるようサービスを提供するものです。そのため、介護施設で提供するサービスに加えて、買い物や掃除なども業務の1つです。

Eさんは独身で、自宅は1人暮らし用のマンション。そのため部屋や浴室はさほど広くないうえ、部屋には荷物が少なくて片付いていました。通常であれば、それほど難しい業務ではありません。ところがEさんは、極めて細かい性格の持ち主でした。

掃除の順番や使う用具には、すべて細かな決まりがありました。また、我々が掃除している間、全体が見渡せる位置に置いた椅子に座って、無言でずっとこちらを見つめているんです。もちろん、我々に向けられるのは暖かい視線ではありません。通常はコミュニケーションとして会話しながら掃除を進めるケースも多いのですが、Eさんは話しかけても返ってくるのは返事のみ。

浴室の掃除では順番が完璧に決まっているだけでなく、1滴の水滴も許してはくれません。完璧に拭き上げないと指摘されます。もちろん、すべてのお宅でキチンと掃除することを心掛けてはいますが、介護士は掃除のプロではありません。一軒ごとにかけられる時間も決まっています。仕事とはいえ、職員は徐々にその利用者の自宅を訪れたくなくなってしまいました。

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介護業界の厳しい現状がお分かりいただけたことかと思います。一人ひとりの特性が異なるからこそ、難しい舵取りを強いられるわけなのです。入居者の方が“介護する側”に多少なりとも配慮していただければありがたい次第なのですが、そうも言っていられないから、人手不足の現状を招いているのだと思います。

<TEXT/さおやさおだけ>

【さおやさおだけ】

元介護士で国家資格・介護福祉士所持のフリーライター。好奇心旺盛で雑食。多種多様なジャンルに興味あり