医療脱毛大手「アリシアクリニック」が突然破産、過去最大規模の“消費者被害”か…弁護士「支払い済みの代金は返金されない可能性が高い」

今月10日、医療脱毛大手の「アリシアクリニック」を展開する医療法人社団美実会と関連の一般社団法人八桜会の2社が東京地裁へ破産を申請し同日、破産開始決定を受けた。

2社は合計9万人の債権者数を抱えることとなり、報道によれば“過去最大規模の消費者被害”だという。

負債総額は124億円超…

美実会は医療脱毛クリニック「アリシアクリニック」を経営し、全国に約40店舗を展開。八桜会は脱毛クリニック「じぶんクリニック」を経営し、約20店舗を展開していた。しかし、いずれも広告宣伝費などがかさみ業績が悪化。破産時の2社合計負債総額は債権者9万1818人に対し124億7133万円に上った。

一般的に脱毛クリニックなどでは、複数回分の通院費用を、契約時の一括払いまたは医療ローンなどを利用した分割払いで支払うことを求められる。アリシアクリニックの破産報道を受けて、SNSでは「契約したてで1度も施術してないのに満額とられた」「半分以上(施術可能回数が)残ってる…最悪」など、債権者となった契約者らの嘆きの声が上がった。

今後の破産手続きの中で、債権者がすでに支払ったお金は戻ってくる可能性があるのだろうか。消費者被害に多く対応する北島菜月弁護士に聞いた。

“未施術分の料金”が返金される可能性はあるか

全額および一部の代金を支払っているが、料金分の施術を受けていない契約者(債権者)に対し、破産した2社から“未施術分の料金”が今後返金される可能性はあるのか。

北島弁護士は、「残念ながら、すでに支払ってしまった分に関しては、返金されない可能性が高いです」として、その理由について次のように説明する。

「今後、破産管財人が破産者(2社)のすべての資産を換価・現金化し、組み込まれた『破産財団』から、債権者らに配当がされるという流れになりますが、現実的に配当できるだけの財産がなければ、未施術分の施術代の返金がされる可能性はなくなってしまいます」

支払い済みの代金の回収は難しいが、一方でローン支払いやクレジットカードの分割払いの“途中”だった場合、残りの支払いを止めることができる可能性があるという。

「サービスの提供者(今回の場合アリシアクリニックなど2社)が破産した場合、契約者はサービスが受けられなくなるため、カード会社や信販会社からの支払い請求を拒否することができます(抗弁の接続)。

ただ、勝手に支払いを止めてくれる訳ではないので注意が必要です。クレジットカードの分割払いを利用していた人はカード会社へ、ローンを組んで支払いを行っていた人は信販会社に連絡し、支払いを止める必要があります」(北島弁護士)

返金以外の救済措置は?

脱毛などの美容サロン・クリニックの顧客は一般的に20~40代の女性とされている。特に若年層にとって脱毛は、決して安くない“自分への投資”だったはずだが、金銭面以外での救済措置が取られる可能性はないのか。

北島弁護士は「破産した会社から何らかの措置があることは考えにくい」と話した上で、「ただし、他社による事業引き継ぎが行われれば、未施術分の施術を受けることができるようになるかもしれません」と加えた。

報道によれば、2社は従業員約1500名を解雇したが「今後スポンサーが選定されれば、再雇用する」としている。

これに対し北島弁護士は、「新たなスポンサーが選定された場合、スムーズに事業を再開できるよう、従業員の再雇用の可能性を示唆しているのだと思います。事業継続の可能性を残しているとみることができます」と指摘する。

新たなスポンサーが選定されたとしても、債権者への返金は「破産財団からの配当以外では難しい」(北島弁護士)というが、あまりに大きな消費者被害。返金がなかったとしても、せめて未施術分の施術を受けられる救済措置がとられてほしい。

先払いシステムの注意点

また、北島弁護士は支払い方法について、都度払いではなく、先払いシステムを導入しているサービスを受ける際に、選択可能であれば、分割払いを選択した方が、仮に破産などの事態が生じた場合には安心であると話す。

「ただし、ローン支払いを含む分割払いには、手数料がかかる場合がありますので、その点も考慮して、支払い方法などを検討するようにしてください」(北島弁護士)