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女性の悩みの一つ、生理前後の気分の落ち込みやイライラ。情緒不安定になるのは生理が原因だと一般的に考えられている。ところが、生理が原因ではなく、うつ病自体が生理痛を引き起こす可能性のあることが研究によって分かった。
◆遺伝子レベルで生理痛の原因を解明か
月経困難症として知られる生理痛(月経痛)は、出血が始まると通常3日間ほど骨盤や腹部に起こる。生理を経験する人の90%以上が、生理痛を経験しているとされる。その痛みはひどく、うつ病の症状と結びついている人もいるが、それは激しいズキズキ感やけいれんのせいだと考えられていることが多い。
また、女性は男性の2倍うつ病にかかりやすく、身体症状がより重篤になることが多い。この性差は特に生理中、妊娠中などの生殖期に顕著になり、世界中で何億人もの人々の生活に大きな影響を与えている。
そのうつ病と生理痛について、ある特定の遺伝子によってうつ病が生理痛を引き起こしている可能性があることが、11月27日に「Briefings in Bioinformatics」誌に発表された新しい研究で判明した。
同研究の主幹で西安交通リバプール大学スクール・オブ・サイエンスのジョン・ソアレス学長は、これまでの研究では月経困難症とうつ病の相関関係は示されているが、遺伝子レベルでの因果関係は立証されていなかったと説明する(CNN)。
◆月経困難症の確率51%増加
研究チームは、ゲノム情報を用いた操作変数法による「メンデルランダム化解析」によって、ヨーロッパと東アジアそれぞれの母集団から得た約60万症例と8000症例を分析した。
その結果、うつ病と月経困難症との間に有意な因果関係があり、気分障害によって月経困難症になる確率が51%増加することが示された。また、うつ病が生殖機能に影響を及ぼす可能性のある遺伝的経路とタンパク質の一部を特定したという。
さらに、うつ病の症状に伴う睡眠障害と月経困難症の関連性についても調べ、睡眠障害の増加が生理痛を悪化させることを突き止めた。睡眠問題に対処することがうつ病と月経困難症の改善の鍵になることも示唆した。
この研究では個人レベルのデータがないため、うつ病の重症度や治療法の個々の違いがこの結果にどう影響するかは不明だと一部の専門家は指摘する(CNN)。
研究論文の筆頭著者で中国西安交通リバプール大学博士課程在籍中のShuhe Liu氏は、「生理痛のような症状の治療において、精神疾患は往々にして考慮されない。今回の調査結果では、ひどい生理痛に苦しむ人々に対するメンタルヘルス・スクリーニングの重要性を強調することになった。それによって、より個人に合った治療の選択肢の提示、医療の改善、そして生理痛にまつわる社会的スティグマの払拭につながることを願う」と述べる。