押し売りならぬ「押し買い」相談件数が右肩上がり… 年末大そうじ“不用品処分”トラブルの回避術

年の瀬も迫り大そうじに手をつけている人もいるだろう。大そうじでは家電や衣類、玩具や本、CDなど不用品が出てくることも少なくない。こうした品々は、自分には不用でも他の人には“お宝”となることもあり、リユース(買取)業者に買い取ってもらえば思わぬおこづかいにも。しかし、業者も多数ありトラブルが発生することもある。

特に、アポイントなしに押し掛けて不用品を安価で買い取る、あるいは売却を検討している物品以外の物も無理やり買い取る“押し買い”については、国民生活センターも注意喚起を行っている。

不用品のリユースや廃棄処分の際、気を付けるべきポイントなどを取材した。

「押し買い」相談件数右肩上がり…

国民生活センターの9月の発表によると、“押し買い”に関する相談件数はここ数年、右肩上がりに増えている。2019年度は5220件だったが、23年度は8595件。24年度も7月末までの集計数(2189件)は前年度同期件数(2340件)とほぼ同数になっている。

相談事例を見ると、その手口は巧妙かつ悪質だ。

「何でも買い取る」という女性からの電話に来訪を承諾、未使用の贈答品や古着を用意していたが、身に着けていた形見の指輪を強引に買い取られそうになった(90歳代女性)

「不用品を買い取り貧しい国に寄付する」という電話に訪問を了承、不要な衣類など数点を売った後に、「貴金属を見せてほしい」と言われダイヤ付きの金の指輪を見せたが売らなかった。業者が帰った後にその指輪がないことに気付いた(年代不明女性)

こうした事例に、国民生活センターは「訪問購入を装った犯罪まがいの行為が行われている可能性があり、非常に問題」として、“押し買い”トラブルに巻き込まれた際は、消費者ホットライン「188(いやや!)」や、警察相談専用電話「#9110」に通報するよう求めている。

安全なリユース業者の選び方

不用品が出た場合、どのリユース業者(古物商、リサイクルショップなど)に売却すれば安心なのか。ポストに投函された「不用品高価買取」や「不用品回収」チラシ、多数のホームページなど、不用品を抱えた人にとって選択肢が多く、安心できる業者の選び方がわからないことも“押し買い”の被害拡大につながっているようにも思える。

業者の選び方について、全国15都府県に35店舗を展開するリユース業大手「バイセルテクノロジーズ」の広報担当者は、以下のように話す。

「運営会社が信頼できそうかどうかを、事前に十分調べることをおすすめします。たとえば、運営会社が業界団体に加盟しているか、上場しているかなどは判断材料になると思います」

業界団体には、リユース事業各社が加盟する「日本リユース業協会」や、偽造品等の流通を防ぐ「日本流通自主管理協会(AACD)」がある。

また、古物の売買には盗品等の流通を防ぐため個人情報の提供が必要になる。「『プライバシーマーク』など個人情報に関する認証を取得している企業だとより安心です」(同担当者)

その上で、「突如ピンポンを押して『不用品を買い取りさせてくれませんか?』という営業があった場合は、違法な業者と言えますので決して対応しないようにしてください」と注意を呼び掛けた。

※特定商取引法第58条6第1項で、「飛び込み勧誘」は禁止されている

買い取り価格は適正?

いざ買い取り業者を選んだあとに気になるのは、その買い取り価格だ。業者の言い値は適正なのか不安になる人もいるだろう。

実際にはどのように価格が決まるのか。前出の広報担当者は、「商品の種類によって異なりますが、一定の流通量がある商品であれば相場はおおよそ決まっています。ただ、需給状況によっては変動します」と説明する。

商品の買い取り価格を決める査定の際は、①商品の種類(ブランド品なのかノンブランド品なのかなど)、取り扱いが可能なのか(ワシントン条約で流通が禁止される動物の毛皮などはNG)、②状態(傷や汚れがどの程度あるか)、③真贋の3点を主にチェックするという。

美術品や骨とう品、希少品など査定データが蓄積しにくい商品は、「特に査定が難しい」といい、そうした物品については「当社の場合は、過去の近似のカテゴリや、同作者名など、近い商品のデータから(価格を)算出しています」(同担当者)。

また、良心的な企業は見積もりだけでも依頼ができる。同担当者も「査定額に納得いただけない場合には、売却をお断りいただいてもまったく問題ございません」と話す。

強引に売らせようとしてきた場合などには、“押し買い”の可能性もあるため前述の消費者ホットラインや、警察相談専用電話への通報も検討してほしい。

不法投棄は刑事処分の対象になることも

一方、不用品について廃棄処分を検討している人が気を付けるべきトラブルもある。

国民生活センターによれば、市区町村から一般廃棄物処理業の“許可を受けていない”業者とのトラブル相談が特に増えているという。たとえば「安価な定額パックを申し込んだはずが、作業終了後に高額な料金を請求された」といった相談が多く寄せられているそうだ。

同センターは、トラブルにならない不用品の廃棄処分について①自治体の回収サービスの窓口に余裕をもって依頼する、②(許可を得た)一般廃棄物処理業者に依頼する、③事前の見積もりと異なる高額な料金を請求された場合は支払いを断る、などが大切だと伝えている。

※エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の廃家電4品目は許可、認定を受けた業者等以外、処分することができないので別途注意が必要

なお、言うまでもなく不用品の「不法投棄」は禁止されており、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金(併科もあり)に処せられる(廃棄物処理法16条、25条1項14号)。

不用品を売却するにしても、廃棄するにしても「納得のいくかたち」で処分してさっぱりした新年を迎えたい。そのためにも業者選びは慎重に行ってほしい。