FPが提案した行動計画と雨宮夫妻の決断

「我が子ながら情けない…40歳にもなって。親子だからといって許せたものじゃない」

怒りと呆れでいっぱいになりながら、雨宮夫妻はお金の専門家に相談することにしました。ファイナンシャルプランナーは、以下の具体的な行動計画を提案しました。

1.法的対応として
・警察への被害届の提出と証拠書類の整理(契約書、メールのやり取り、振込記録など)
・消費生活センターへの相談と、契約の取消可能性の確認
・必要に応じて弁護士への相談

2.金銭面での対策
・現在の預貯金残高と今後の収支計画の見直し
・年金受給開始までの生活費の見直しと節約計画の策定

3.再発防止と自立支援
・家族での金融教育セミナーへの参加
・ハローワークと連携した就職支援
・必要に応じて心理カウンセリングの検討

ここで雨宮さんは深く考えました。今この瞬間、健太さんを完全に見捨てるべきか。それとも、最後まで支え導くべきか。家族の絆、親の責任とは何か。彼の心の中では、健太さんへの失望と、それでも息子を見捨てられない父親としての責任感が衝突していました。

最終的に、彼は息子との完全な絶縁ではなく、以下のような段階的な対応を選択しました。

まずは「金銭管理の改善」です。健太さんのアルバイト収入から最低毎月2万円を返済してもらうことを伝え、さらに家計簿アプリを共有することにしました。

次に「就労支援」です。これまで息子が自分で何とかするだろうと見守ってきましたが、正規雇用の職を早く見つけられるよう定期的にハローワークに行くこと、職業訓練校へ通うことを強く勧めました。

そして「金銭教育」です。40歳の息子に今さらとは思いましたが、詐欺に引っかかってしまうようなリテラシーの低さを解消するため、FPから教わった市民講座に行ってもらうことにしたのです。

そして、最後に「心理的サポート」です。自分たちの大切な老後資金500万円をドブに捨てた息子ですが、本人も強い反省の姿勢を見せています。妻も健太さんを完全に見捨てることはできないと、夫と共に息子の自立をサポートすることにしました。

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再出発への道:家族の再生と自立への挑戦

健太さんは、詐欺被害のトラウマと経済的挫折を乗り越えるため、さっそく市の主催する金融リテラシー講座に通うことにしました。彼の心には、父親の期待に応えたいという思いと、自分の過ちを償いたいという決意が芽生えていました。親子関係は徐々に回復し、相互理解への道が開かれつつあります。

しかし、失った500万円は夫婦にとってあまりに大きな金額でした。65歳で引退と考えていた老後プランを考えなおしているところです。

今回のような詐欺は、弱った人の心につけこんできます。身を守るためには「そんなに簡単に稼げる方法はない」という当たり前のことを理解すること。そして、何かの契約をする場合には、信頼できる相手かをしっかり見極めることが基本中の基本です。

詐欺の手口は年々巧妙化しており、親子で情報を共有し学び合う姿勢が大切です。また、家族だからこそ遠慮せずに、金銭トラブルの予防と対策について話し合う機会を定期的に持ちましょう。困ったときは、すぐに専門家や公的機関に相談することも重要です。

また、親世代の老後資金は、しっかりと自己防衛する必要があります。家族といえども預貯金口座の管理を厳重にし、必要に応じて引出限度額の設定や、老後資金用の別口座開設を検討するのもよいでしょう。

青山創星
ファイナンシャルプランナー