魚肉練り製品などのメーカー紀文食品によると、2024年正月におせちとして用意された率のランキングで「3強」は、(1)かまぼこ(2)雑煮(3)黒豆だった。それぞれ「いわれ」がある。紅白かまぼこは日の出を象徴し、紅はめでたさと喜び、白は神聖を意味するという。黒豆には、「まめまめしく」暮らせるようにとの健康長寿の願いがこめられているとされる。おせち料理は和食文化の代表である。そのルーツは諸説あり、弥生時代にはじまり平安時代に定着したといわれる。

「コスパ」と「高級化」の二極化も進む

おせちは全体として値上がりしている。帝国データバンクの2025年正月シーズン「おせち料理」価格調査によると、大手コンビニや百貨店、スーパー、著名な日本料理店など計110社で販売されている「三段重(3~4人前分)」の平均価格は2万7826円(税込)。これまでの2022年2万5190円→2023年2万6407円→2024年2万7466円という上昇傾向を今シーズンも引き継いでいる。さらに、物価高の影響が波及し、「コスパ」と「高級化」の二極化も進んでいる。コストパフォーマンスにこだわる消費者向けの普及価格帯と、もう一方は高級ホテルやレストランを中心とした高価格帯だ。

消費者の気持ちはどうだろう。百貨店「松屋」の「2025年お正月の過ごし方・おせちに関する意識調査」によると、おせちを食べる理由は「毎年の恒例行事、習慣になっているから」68.5%、「日本の大切な伝統行事だから」45.0%、年末年始は家事を減らし、ゆっくり過ごしたいから」28.5%などとなっている。

とりわけ注目されるのは全体の7割が、おせち購入では「節約を意識しない」と答えている点だ。前年も同じ割合で、経済産業省経済解析室は「実質賃金の低下が続いているなかでも、正月のおせちくらいは良いものを食べようという『メリハリ消費』のあらわれ」とレポートしている。

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ネット通販の利用には「注意点」も

近年、伸びているのが「ネット通販」である。冷凍技術の発達によって冷蔵ものとそん色なくなったことが大きい。スーパーで買う人はなお多いが、ネット通販は夏から「早割」をうたう活発な宣伝で予約を呼びこんでいる。楽天市場で、おせちの流通総額は2020年の同期比で約1.5倍に増えている。今シーズンの人気トレンドのキーワードは「オードブル」「ハイブリッド」(和洋中などの組み合わせ)「ご当地」(地域特有の食材や調理法)の三つだという。

ただし、ネット通販にはいくつか注意すべき点もある。

・冷凍か冷蔵か。保存場所とサイズ
・配達日と日時指定の可否
・送料込みか別途か
・万一不備があったときの返品や交換の対応
・食材の産地や安全性についての記載

「商品が届いたら、思っていたのと違う」と残念なことにならないように、写真の見た目だけでなく、条件やデータをしっかり確認したい。

(ジャーナリスト 橋本聡)