「年始に帰省しなきゃ良かった」箱根駅伝を見ながら親族が“偏差値”争い――仰天ニュース傑作選

過去5万本の記事より大反響だった話をピックアップ!(初公開2022年1月18日 記事は取材時の状況) *  *  *

 正月の帰省を自粛せざるを得なかった時期もあったが、その後「久々に実家に帰れた」という声をたくさん聞いた。しかし、故郷でようやく両親や親戚との再会に喜んだのも束の間。そこで嫌な思いをした人もいる。

 数年ぶりに地元へ帰省したネイリストの真莉愛さん(27歳・仮名)は「東京の自宅で箱根駅伝をゆっくり見ていたほうが良かったです」と真顔で言う。

◆両親から「今年は帰ってきてほしい」

「私は箱根駅伝ファンで2日間ちゃんと見る派なんです。最近できた彼氏も箱根駅伝が好きなんで、本音を言えば帰省なんてせずに東京で一緒に見たかった」

 真莉愛さんの地元までは新幹線で3万円以上かかる。彼女にとって大きな出費であり、帰る必要もなかったのだが……。

「またいつどうなるかわからないので、親からは『親族みんな集まるし、今年は帰ってきてほしい』と懇願されて。断りきれませんでした。まぁ、往復の交通費をくれたので甘えたっていうのもありましたけど」

◆箱根駅伝をめぐって親族間で事件が勃発

 12月31日の最終の新幹線で帰省。年越しそばを食べつつ、紅白歌合戦を見ながら平和に過ごしていた。そして1月2日。親族が続々と集まり、楽しみにしていた箱根駅伝をみんなで観戦。だが、そこで事件が勃発した。

「私の元カレが神奈川大学だったんです。『同級生が箱根を走るから見よう』って言われたことがキッカケで、それ以来ハマッてしまって。特に応援してる大学はないけど、箱根の選手って意外にイケメンが多いし、なにより毎年ドラマがある」

 1区で中央大学の吉居大和選手が素晴らしい走りを見せて区間新記録を更新。真莉愛さんは「この選手かっこいいな〜」と見惚れていたところで親族間に変化が起きる。

◆「お金でも賭けているの?」賭博場のような荒々しい空気


「うちの親族は箱根駅伝に出場している大学の卒業生が多いんです。だから、みんなそれぞれの母校を応援している。母校が一歩リードすればガッツポーズしたり、母校が抜かれてしえば舌打ちしたり。誰も穏やかに見れないというか」

 お酒も入っているせいか、居間は「まるで賭博場のような荒々しい空気だった」と真莉愛さんは苦笑いする。

「応援の仕方が異常で『お金でも賭けているの?』と聞きたくなるほどでした。そもそも箱根に出場するだけですごいんだから、普通に応援したらいいのに……」

 さらにヒートアップした親族は、箱根駅伝を見ながら偏差値の話を始めたのだ。

◆次第に母校の“偏差値”争いに

「こんなに頑張って襷を繋ごうと走っている選手たちを見ながら、よくもこんなくだらないことで喧嘩してるなって、引いてしまうほどでした」

 それは、以下のようなものだった。

「箱根では優勝経験が少ないけど、うちの母校のほうが偏差値が高い!」

「いや、大手への就職率ならうちだ!」

「いやいや、うちの母校のほうが駅伝でも学校としても人気がある!」

 真莉愛さんはその様子を冷ややかな目で見ていたが、伯母の一言でとばっちりを受けることに。

◆東京でネイリストとして働く私は宇宙人

「ギャーギャー騒ぐ酔っぱらいを無視して、おとなしく駅伝を見ていました。すると伯母が急に『あんたは大学に行ってないから私たちの気持ちはわからない』と言い出したんです。

 確かに私は最終学歴が美容の専門学校なので高学歴とは言えません。でも自立してるからいろいろ言われる筋合いはないんですけど」

 真莉愛さんは「言い返してもしょうがない」と笑ってごまかしていたというが、伯母は嫌味を言い続けた。その話題に他の親族も乗ってきたのだ。

「その伯母は父の姉なんですが、今どき古すぎるくらいに学歴主義。いとこもその教育を受けているので同じような価値観なんです。

 だから『大学も出ないで東京でネイリストなんかやって将来どうするの?』と口々に言うんです。伯母やいとこからしたら、ネイルサロンで働く私は宇宙人みたいなもんなんでしょう(笑)」

◆不毛な争いが続く…

 2日の往路、3日の復路、両日ともに不毛な会話がずっと続いていたそうだ。

「誰かしらが母校でマウント取ったり、嫌味を言ったり、箱根駅伝をゆっくり見ることができませんでした。地元をバカにするわけではないけど、親族はみんな考えが古くて情弱なんですよ。

 たとえば、専門卒でネイリスト=安月給みたいに思われているけど、正社員だし指名が入ればちゃんとバックがもらえる。地元企業で働く従兄弟の2倍は収入があると思う。でも、いちいち言うのも面倒くさいから従兄弟を持ち上げて黙っておきましたけど」

◆実家に帰るのは正月じゃなくていい


 来年以降は彼氏の有無にかかわらず「わざわざ帰省したくないです」と、真莉愛さんはキッパリ言い放った。

「親族間では、職業や結婚とか、そういうマウントの取り合いが一生続くんだと思います。たまに親の顔は見たいけど、別にお正月である必要はないので」

 せっかく時間をかけて帰省しても、ストレスしか溜まらないのであれば意味がない。最後に真莉愛さんは「実は“自粛で帰省できない”っていう建前があってホッとしていました。そう思う人は、意外に多いのかもしれません」と語った。

<取材・文/吉沢さりぃ>

【吉沢さりぃ】

ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720