Web広告などを見ていると、健康食品やサプリメント等の宣伝で「本当にそんな効果が出るの?」と疑ってしまうような文言を見かけることがあります。そういった怪しい表示に騙されないようにするためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。そこで本記事では、京都大学大学院医学研究科健康増進・行動学分野准教授の田近亜蘭氏による著書『その医療情報は本当か』(集英社)から一部抜粋し、医療や健康に関する情報の広告を規制する「健康増進法」と「景品表示法」について解説します。

うそ、大げさな表示は法律で禁止されている

先述の「健康増進法」とは、2003年5月に施行された法律で、所管は厚労省です。

健康食品やサプリメントに関することでは、「何人も食品として販売に供するものについてその健康の保持増進の効果等に関し、(A)著しく事実に相違する表示をし、または(B)著しく人を誤認させるような表示をしてはならない」(著者改変。またA、Bは著者による記述)とされています。

法律上、(A)を「虚偽表示」、(B)を「誇大表示」と呼び、注意を喚起しています。

それぞれについて、消費者庁は文書(「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」2013年12月制定から改定を重ねている)で次のように説明しています。一部を紹介します。

(A)虚偽表示・事実と違う表示

十分な実験結果等の根拠が存在しないにもかかわらず、「3か月間で○キログラムやせることが実証されています」と表示する
体験者や推薦者が存在しないにもかかわらず体験談をねつ造した場合、ねつ造された資料を表示した場合など。

(B)誇大表示・人を誤認させる表示(「印象」や「期待感」と実際の結果が違う)

特定の成分について、健康保持増進効果等が得られるだけの分量を含んでいないにもかかわらず、生活習慣を改善するための運動等をしなくても、とり過ぎた栄養成分もしくは熱量、または体脂肪、もしくは老廃物質等を排出し、または燃焼させることをイメージさせる。
メリットとなる情報を断定的に表示しているにもかかわらず、デメリットとなる情報(効果が現れない者が実際にいること、一定の条件下でなければ効果が得られにくいこと等)が表示されていない。
体験者、体験談は存在するものの、一部の都合の良い体験談のみや体験者の都合の良いコメントのみを引用するなどして、誰でも容易に同様の効果が期待できるかのような表示がされている。
健康保持増進効果等について公的な認証があると表示しておきながら、実際には、当該効果等に係る認証を受けていない。
根拠となる学術データのうち、当該食品にとって不都合な箇所を捨象(排除や切り捨ての意)し、有利な箇所のみを引用する。

参考までに、同法は、「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」に基づいた国民の健康づくり・疾病予防を推進するために、医療制度改革の一環としてつくられた法律です。

2020年4月には「改正健康増進法」が施行され、これには「望まない受動喫煙を防止する」ために、病院、診療所、学校、児童福祉施設、行政機関などでは敷地内禁煙を、事務所、工場、ホテル、旅館、飲食店(経営規模が小さい場合はのぞく)では原則屋内禁煙などの規則が設けられています。

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著しく優れている・有利性をうたう表示は禁止

もうひとつ、「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)」(1962年施行。現在の所管は消費者庁)、略して「景表法」という、健康食品やサプリメントの表示規制が規定されている法律を紹介しておきます。同法は一般消費者の保護を目的に制定され、不当な表示には次の3つがあるとしています。

それは、たとえば「このダイエット食品は痩身効果がすごい」 と広告するなど、商品やサービスの品質、規格などの内容が著しく優良だとする「優良誤認表示」、「歯列矯正○○円」として実際には矯正装置の費用が別途必要なことを記さないなど、価格を著しく安く有利に見せかける「有利誤認表示」「誤認されるおそれがある表示」です。

景表法による表示規制により、医療広告の規制と同様に、うその表示はもちろん、お得感を訴えながらも実際には得ではないといった、「期間限定割引をうたいながら期間後も同じ価格だった」とか、「小さな文字による注意書き」なども不当表示となります。

消費者庁の公式ウェブサイト『事例でわかる景品表示法 不当景品類及び不当表示防止法 ガイドブック』では、事例や実際にあった違反などが掲載されています。読めば読むほどに、わたしも「こんな表示、あるある~」と思っています。

また、昨今の機能性表示食品を巡る社会問題を受けて、機能性食品制度の一部改正が2024年9月から順次実施されています。

気になる健康食品やサプリメントの説明書、また広告の表示で違和感を覚えることもあるでしょう。一般消費者が信じやすい表示や広告をする商品には、心理学で説明できる仕掛けが意図的に施されている場合が多いのです。その仕掛けについては第十一章で紹介します。

医療や健康に関する情報を「広告」するには、さまざまな法律による規制があります。医療機関や商品を販売するメーカー、医師、事業主らが自由に宣伝できるわけではありません。

医療広告も含め、まぎらわしい表現だなあ、いいことばかり書いてあるけれど本当かなあ、価格がえらく安いなあ、などと思った場合はいったん冷静になり、信頼する人に相談するなど再考してください。

田近 亜蘭
京都大学大学院
医学研究科健康増進・行動学分野准教授