アボカドの実生株を早く省スペースで開花・結実させる裏技


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比較的入手容易な品種「ハス」の種子だけで開花結実させます。

まず5月に「ハス」の種子を播いて(土に埋めて)、実生苗を多く作ります。鉛筆程度の太さまで育った苗を台木として、同じ「ハス」の実生の枝を接ぎ木します。6~7月が接ぎ木の適期ですが、やや難しいので多くの苗を作ったほうがよいでしょう。

接ぎ木が成功すれば、大きく育てなくても早く開花します。同様の開花株を複数育てると、結実するようになります。ただしハスは寒さにあまり強くない品種なので、冬はビニールハウス内などで栽培するとよいでしょう。

違う品種の受粉樹を用意しなくても結実するのは、実生苗のため開花習性に変異が生じやすいことが考えられます。

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アボカドの剪定・仕立て方


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全く剪定しないとあまり分枝しないことも多く、急速に背が高くなります。地植えした場合は、どんどん成長して2階建ての家を越える高さになってしまいます。

実生苗は、30cmくらい伸びたら枝先を切る摘心を行ってください。接ぎ木苗も購入したら直立した枝の摘心を行ってください。上方向に伸びる枝の摘心を繰り返すことで樹高を抑え、コンパクトな樹形にすることができます。

結実している場合、梅雨明け頃から伸びる新しい枝は、早めに摘心してください。そのままにすると栄養を取られ、果実が落ちる原因になります。

アボカドに適した環境・置き場所


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鉢植えの置き場所

鉢植えは、日当たりがよく風が強く当たらない場所が適します。室内で冬越しさせた鉢植えは、4月下旬から11月までは、屋外の日向に置いてください。

地植えに適した場所


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根が酸素不足に弱いので、水没しない場所を選ぶことが重要です。10年育てて実を付け始めた株が、例年にない台風で1晩水没しただけで枯れた例などがあります。斜面や高台のような場所など、確実に水没しない場所に植えるようにしてください。

南面のゆるやかな傾斜地が理想的です。ただし傾斜地の上のほうは乾燥しやすく、水やりが必要になりやすいので注意してください。また強風や塩害に弱いので、周囲に防風林があるなど風当たりの弱い場所が適します。

木が大きくなってくると夏に乾燥しやすいので、灌水設備のある場所が望ましいです。

屋外で栽培できる地域

関東地方南部の海沿いの地域や都心部が、アボカドが屋外栽培できる北限とされます。ただし冬に花芽が枯死する場合もあるため、結実が安定しないことが多いです。温室で無加温栽培できるので、温室内の栽培のほうが結実させやすいでしょう。

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アボカドの育て方・日常の手入れ


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水やり

春と秋は鉢土の表面が乾いたら水やりしますが、夏は毎日水やりしてください。また葉が多く茂った鉢植えは乾きやすく、より多くの水やりが必要になります。夏は1日2回の水やりが必要な場合も多いです。

受け皿に水を貯めるのは避けてください。根が酸素不足になって根が傷み、突然枯れる可能性が高くなります。

肥料

鉢植えは4月から10月に、3要素が等量の緩効性化成肥料などを規定量与えてください。

地植えした場合は、4月と10月に施肥してください。実が付くようになったら、7月にも肥料を与えてください。

植え替え

大きく育てるには、毎年春に一回りから二回り大きな鉢に植え替えてください。根が酸素不足に弱いので、急に大きな鉢に植え替えると生育が衰えやすいです。

用土は特に選ばないので、草花用の一般的な培養土で大丈夫です。水はけが悪い場合は、パーライトを1~3割足すとよいでしょう。

病害虫

生産地では病害虫は重要な問題ですが、日本では目立つ病害虫がありません。無農薬で栽培しやすいです。

温室栽培では害虫類の被害が発生します。カイガラムシやコナジラミ等の発生に注意してください。

冬越し

室内の日当たりのよい窓際のような場所に置いてください。室内に置けば、比較的容易に越冬します。

アボカドが屋外で越冬できる海沿いの暖かい地域や都心部でも、種まきから3年くらいまでの幼い株は屋外の冬の寒さで枯れやすいので、室内で冬越しさせたほうがよいでしょう。

アボカドの実をならせるポイント


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異なる開花タイプの接ぎ木苗を2株用意する

根が確実に水没しないようにする

夏は水切れしやすい

摘心を繰り返して樹高を抑える

地植えは適地の選定が非常に重要

消費量が多く栄養価が高いアボカドは、今後日本での栽培が盛んになることが見込まれます。国内で生産された高品質なアボカドは、多くのアボカドファンが待望しています。アボカドを家庭で育てて実をならせるのも、やりがいのある挑戦になることでしょう。ぜひアボカドを育てて、樹上で実らせた美味しい果実を味わってください。

Credit

文 / 小川恭弘
– 園芸研究家 –


おがわ・やすひろ/1988年、東京農業大学農学部農学科卒業。千葉県館山市の植物園「南房パラダイス」にて観葉植物、熱帯花木、熱帯果樹、多肉植物、ランなど温室植物全般と花壇や戸外植物の育成管理のほか、園全体のマネジメントなどの業務に18年携わる。現在フリーランスとして活動。著書に『わかりやすい観葉植物』(大泉書店)、『ハイビスカス』(NHK出版)がある。