在留外国人数が過去最高を記録するなか、SNSでは問題行動が目に余る一部の不良外国人を敵視する声も溢れる。果たして、共生の道はあるのか? 今回、日本で必死に生きる彼らの自宅に突撃。虐げられた魂の叫びに耳を傾けた。
今回は、暴行容疑で4度逮捕されたモンゴル人力士に突撃ルポを敢行。
◆テムーレンさん(仮名・40代)
国籍:モンゴル
日本滞在:24年
16歳で来日するもトラブルで20代後半に引退。暴行罪で4度の逮捕歴あり。貿易関係の会社を経営し、日本人の恋人と2024年に結婚。近々、配偶者ビザに切り替え、永住権を得る予定
◆力士引退から波乱の道へ4度目の逮捕で気づいた愛
「拘置所に入ってから続けてるんだ。いい暇つぶしになる」
大きな体を揺すらせ、片手には数独の本を持ちながら待ち合わせ場所に迎えに来たのは、モンゴル出身の元力士・テムーレンさん(仮名・40代)。
つい「最近、日本人女性と結婚したことを機に、彼女の住む部屋に入り浸っているんだ」と語りながら、都内東部の賑やかな商店街近くにある小さなアパートに案内してくれた。
結婚前に住んでいた家が千葉にまだ残っているらしいが、「そっちはそのうち引き払うよ。こっちのほうが昔の相撲仲間とから飲みに誘われたときに行きやすいんだ」と笑う。
テムーレンさんは相撲部屋のスカウトを受け、16歳で来日。厳しい稽古に耐え、順調に番付を上げていったが、30歳になる前に、部屋内のトラブルに見舞われ、急遽引退を余儀なくされた。
「断髪式もせず、ちょんまげは床屋で切った。店主も驚いてたね。『いいんですか!?』って。もうなんでもいいやと自暴自棄になって、金髪にした。ついでに耳にピアスも開けたよ(笑)」
そこからは土木系の仕事を経て、貿易関連の会社を起業。月50万円は自由に使える身になったが、逮捕を機に歯車が狂いだす。
「引退から3年後、不法侵入と暴行罪で逮捕されたんだ。路上で不良に喧嘩売られて、追いかけたらビルの一室に入っていくからドンドンドン!とドアを叩いて入っていった。気づいたら室内で10人くらいに囲まれてたね。反社の連中の事務所だったんだ。で、鉄パイプで後頭部を殴られて気づいたら病院。俺は被害者なのに、あいつらにハメられて加害者扱いだよ」
◆酒癖の悪さで逮捕を重ねてしまう
その後も酒癖の悪さから、飲みの席でのトラブルは少なくなかったが、なんとか警察沙汰は免れていた。
しかし、ここ2年は暴行罪で逮捕歴を重ねることに。
「でもまあ、俺から言わせれば、とばっちりみたいな逮捕だね。酔っ払って路上で寝てる男をどかしたら、俺がぶん投げたことにされたり、喧嘩を売られたからちょっと踏んづけたら大げさに騒がれたり。取り調べではヤクザとの関わりがないかマル暴にも詰められて、書類送検で済んだけど罰金10万円もってかれた」
4回目は路上で飲んでいたら、当たり屋にぶつかられて「200万円出せ」と絡まれたのだという。
「俺は心配して『そんなことしていたら危ないよ?』と注意がてら軽くビンタしただけ。そうしたら警察に駆けこまれて求刑6か月執行猶予3年。俺がモンゴル人で元力士だから、加害者扱いされやすいってのも、少なからずあると思うよ。人相も悪いしね(笑)」
しかし、会社の経営は逮捕のたびに滞り、売り上げはどんどんゼロに近づいていった。
「4回目の逮捕でもう帰国しようかと思ったよ。逮捕歴で就労にも制限ができて、勝手に働くわけにもいかない。でも一度帰国したら前科があるから二度と日本に入国できないかもしれなくて……」
◆彼女との結婚を機に更生を誓う
ピンチを救ってくれたのは1年前から交際中の日本人の恋人だ。
「彼女が『結婚したら日本にいられるじゃん!』と言ってくれて、先日入籍したんだ。配偶者ビザを申請中だよ。本当に妻には感謝してる」
彼女とは路上飲みの場で知り合ったという。
「病気の関係で彼女も働けなくて、生活保護を受けているけど、お互い一緒にいて気楽というか、馬が合う……。しっかり者の彼女が“お金もったいないから、ちゃんと自炊しようね”って言うんでモンゴル風の餃子を作るんだ。おいしいって喜んでくれるよ」
現在の生活費は会社資金を取り崩すなどして凌いでいる。
「でも、それももう長くはもたない。ビザが下りたら、早く働いて会社を立て直したいね。こんな身なりだから友達から冗談交じりで“悪いことでもして稼いだら?”と言われることもあるよ(笑)。でも、俺は自分の仕事に自信があるんだ。こう見えて資格もたくさん持っているしね。とはいえ……執行猶予中なんで、次に逮捕されたら終わり。下手なことしないように酒には気をつけます(笑)」
取材中2時間で度数の高い500㎖缶の酒を何本も飲み干していく姿に一抹の不安を覚えた取材陣だが……愛のチカラで更生なるか。
<取材・文/週刊SPA!編集部>
―[突撃ルポ[元不良外国人の自宅]]―