数年ぶりに帰省したら実家が“ゴミ屋敷”になっていた。「家を出るつもりはない」弟との関係が悪化し…

年末年始は実家に里帰りする人が多いはずだ。しかし、家族の関係が原因で帰省に気が重くなっている人も少なくない。東京都内に住む大林博之さん(仮名・43歳)もその一人である。

◆“家族”に悩まされ続けた人生

大林さんには3歳年下の弟・明夫さん(仮名・40歳)がいるが、昔から彼が起こすトラブルに巻き込まれることが大きな悩みだという。

「弟は幼い頃から問題ばかり起こしてきました。小学校時代はクラスメイトと喧嘩なんてしょっちゅう、中学に入ると引きこもりがちになりました。弟が実家の一室を占領していたせいで、僕は一人部屋を与えてもらえませんでした。

両親は僕達が幼い頃に離婚したため、母親は毎日のように仕事に行っていました。そのため、家では弟と二人きりになることが多かったのですが、それが嫌で近所に住む祖母の家で宿題をしたり、夕飯をご馳走になっていました」

学生時代、ほとんど祖母に育てられた博之さんは真面目に成長し、高校受験では進学校に合格した。その後、大学を経て広告代理店に就職。一方、弟の明夫さんはろくに高校にも通わず、どうにか卒業したものの、その後は定職に就かずフラフラと過ごしていたという。

「でも、母親は弟に甘かったんです。僕は大学が全寮制で、社会人になってからも一人暮らしでしたが、弟はずっと実家で暮らしていました。その結果、母とは連絡を取っていたものの、弟とは次第に疎遠になっていったんです」

◆引きこもりの弟は結婚式には呼べない

その後、博之さんは27歳のとき、知人の紹介で知り合った女性と結婚。結婚式は親族のみで行う予定だったが、博之さんは弟に会いたくないという理由から相手の両親と自分の母親だけを招き、わざわざ海外で挙式を行ったという。

「弟は問題を起こすだけでなく、とにかく性格がだらしないんです。引きこもっていたときは部屋を片付けないし、何日も風呂に入らないことさえありました。結婚式の直前に母に弟の様子を尋ねたところ、髪もヒゲも伸び放題で、とても妻の親族に会わせられる状態ではないと聞いて、式には呼ばないことに決めたんです」

結婚式に呼ばなかったことをきっかけに、博之さんはさらに弟との距離を置くようになった。その後、弟が結婚したという話を聞いたときは、「大丈夫だろうか?」という心配とともに、「これで少しは落ち着くかもしれない」と安堵が入り混じる複雑な思いだったという。

しかし、博之さんの淡い期待は無情にも打ち砕かれることになる。

◆結婚後も実家で暮らす弟

それは久しぶりに博之さんが実家に帰省したときのことだった。

「普段はめったに帰らないんですが、そのときは地元で高校の同窓会があり、実家に泊まろうと思って母に連絡をしました。すると、母が少し言いづらそうに弟夫婦が今、実家で暮らしていることを打ち明けてきたんです。

弟夫婦は結婚当初、実家の近くで暮らしていたものの、家賃を滞納して追い出され、仕方なく実家に戻ってきたとのことでした。弟の奥さんについてはそのとき初めて知ったのですが、まさか弟と同じくらいだらしない人だったとは思いませんでしたね……」

母親からの話を聞いてしまった以上、ほうっておくわけにもいかず、博之さんは数年ぶりに実家に帰省することにした。そして、そこで驚きの光景を目にすることになる。

◆ゴミ屋敷と化した実家

「実家が完全にゴミ屋敷と化していたんです。床には弁当の空き容器やペットボトルが散乱し、排水口は髪の毛で詰まっていて水も流れにくい状態に。さらに、弟夫婦が部屋を占領し、高齢の母親はそのゴミにまみれた環境で暮らしていたんです。それだけでも衝撃でしたが、さらに驚いたのは実家に猫がいたことです。弟夫婦が連れてきた猫らしいのですが、トイレの掃除をしていないのか、家中がひどい悪臭で、猫アレルギーのある僕はそのニオイだけで全身が痒くなりましたね……」

このような劣悪な環境に母親を住まわせておくわけにはいかないと思った博之さんは、母親を連れてホテルに泊まり、今後の対策を話し合ったという。

「弟夫婦との話し合いはなかなか進まず、結局、家を出るつもりはないといってきたんです。なので、母親を引っ越しさせることにしました。幸い、亡くなった祖母の家がまだ残っていたので、そこに母親を住ませることに。その後、母親から聞いた話によると、弟夫婦はほとんど仕事もせず、母親に金を無心していたようです。もはや、呆れて言葉が出ませんでしたね」

母親の引っ越し代はすべて博之さんが負担することになった。この一件で、博之さんと明夫さんの関係は絶縁状態に陥った。それだけではなく「母親にも、弟との縁を切らせました。これ以上、母親が苦しむ姿を見たくなかったんです」と博之さんは語る。

今後、兄弟の関係はもちろんのこと、家族の絆が修復される可能性は、もはや皆無に近いだろう。

<取材・文/結城>

―[年末年始の憂鬱]―