インフレ時代、ローンは急いで返済しないほうがいい

また、コロナ禍以降の日本は物価が上がり、インフレの時代に突入しています。このような場合、ローンは急いで返済しないほうが有利です。

仮に、2%の物価上昇が続き、Aさんの月々の支出35万円のうち10万円がローン返済だとしましょう。

住宅ローンが固定金利の場合、返済額は変わらないわけですから、物価上昇で増えていくのは、残りの25万円となります。

2%の物価上昇が10年続くと、生活費は35万円から約40.5万円となりますが、内訳はローン以外の生活費が約30.5万円(+5.5万円増)と住宅ローン10万円(変化なし)となり、生活費全体に占めるローン返済の割合は年々低下します。

では、変動金利だった場合はどうでしょうか? これも同様に考えることができます。

支出35万円のうち10万円がローン返済で、住宅ローンが毎年0.5%ずつ増えるとしましょう。

2%の物価上昇が10年続くと、生活費は35万円から約41万円となります。内訳は、ローン以外の生活費約30.5万円(5.5万円増)と、住宅ローン約10.5万円(5,000円増)です。

このように、固定金利であっても変動金利であっても、インフレ下において物価上昇率より低い借り入れは有利に働くため、なおのこと「繰上返済」はおすすめしません。

気持ちはわかるが…「長期目線」で冷静な判断を

「住宅ローンを早く返してしまいたい」という気持ちはわかりますが、繰上返済はタイミングによって損してしまう可能性があるため注意が必要です。今回紹介した資産運用など、そのほかの活用方法もあわせて検討することをおすすめします。

退職金はまとまった資金が手に入るタイミングですが、金融機関に勧められるがまま金融商品を購入したら損をした……など、退職金にまつわるトラブルは絶えません。

老後の生活を支える大切な資金ですから、上手に活用することが大切です。

井上ヨウスケ
ファイナンシャルプランナー