日本では季節の変化を敏感に感じ取り、年中行事や習わしに添った植物を暮らしに取り入れてきました。

「二十四節気の花あしらい」では難しいルールにとらわれず、気軽に季節を感じられる花を楽しむテクニックを第一園芸のトップデザイナー、新井光史がご紹介いたします。

2025年1月5日から二十四節気は小寒に

一年で最も寒い時季に入ることを表した節気です。小寒のはじまりの日は「寒の入り」と呼ばれ、この日から大寒の最終日までが「寒の内」となります。

今回はそんな寒い時季でも花を咲かせることから、「雪中花(せっちゅうか)」の別名を持つ、水仙がテーマです。花のみならず、葉も美しい水仙をさまざまな方法で楽しむ花あしらいをご紹介します。

一輪を生ける

水仙ならではの、凛とした佇まいをシンプルに表現した花あしらいです。

一輪挿しはどの花でもできますが、特に一輪が似合うのが水仙かもしれません。他の花と少し異なるのは、花だけではなく、葉も使って「ひと組」として扱うことです。華道ではそれぞれの流派ごとに、花と葉の組み方について手法がありますが、ここでは気負わずにひと組をシンプルなガラスの一輪挿しに生けました。

後半で水仙の花と葉の組み方についてはご紹介しますが、そうしたことをせずとも、買ってきた花をそのまま一輪挿しに生けるだけでも十分美しい花あしらいになります。

まずは、シンプルに姿と香りを楽しんでみましょう。

ボリューム感のある陶器の一輪挿しに生け変えてみました。

器にあわせて水仙は一枚目より短めにカットしています。花と器とのバランスに絶対値はありませんが、一輪で生ける場合の長さは、おおよそ1(器):1(花)から1(器):2(花)の範囲に収めるとバランスが取りやすいかと思います。

まるでガラスのかたまりに水仙が浮いているように見える花あしらいです。

見た目は不思議ですが、仕組みはとても簡単。

クリップ状に曲げたワイヤーで水仙を留めて、水をぎりぎりまで張っているだけです。

シンプルさが命といえる花あしらいですので、花を留めている箇所は見えても気にならないように、丁寧にシンプルにするのがポイントです。

そして、この花あしらいの最大の見せ場は「水」。溢れる寸前まで入った水も器の一部です。水がこぼれても気にならない場所で、ぜひ試しいただきたい花あしらいです。

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組み合わせて楽しむ

水仙をいろいろな植物と組み合わせた花あしらいもまた一興です。

水仙との組み合わせる植物は、冬から早春の季節を感じる植物や、色を抑えた植物を選ぶと間違いがありません。ここでは、切り枝の花器にシルバーリーフの「コチア」、白い実の「ナンキンハゼ」、黒っぽい実の「シャリンバイ」を添えて、冬の森の中でそっと咲いている水仙を表現しました。

直方体の小さなガラスの器を二つ並べ、シナモンの束をあしらいました。水仙は器の角に生けて、シナモンの束で抑えています。湿と乾のコントラストと、冬の香りをイメージした、ちょっと遊び心のある花あしらいです。

こちらは水仙にフレッシュな雰囲気の「ローズゼラニウム」を添えた花あしらいです。瑞々しく、香りのよいものどうしを組み合わせると、早春の雰囲気に。

水仙は組み合わせる植物次第で季節感がガラリと変わりますので、飾るタイミングにあわせて、いろいろな植物で季節感の演出を楽しんでみましょう。