大きく生ける

水仙は長さを活かした生け方も楽しめます。ここでは真っすぐに伸びた葉が美しい「ニューサイラン」と水仙を使った花あしらいの方法をご紹介します。

扇形のガラス花器にニューサイランが全体に散らばるように生け、ひと組の水仙を添えました。ニューサイランと水仙の細く伸びた葉の形をリンクさせた、シンプルで大胆な花あしらいです。

さらに水仙とニューサイランを足しました。使用している花の種類は同じですが、ボリューム感が増すことで、全く違う雰囲気に変化します。

ニューサイランと水仙をそれぞれかたまりにして、V字型に生けました。線の美しさが際立つ花あしらいです。

こちらも同じくV字型に生けていますが、水仙の葉を全て取り除いています。Vの始点がはっきり見えて、よりシャープでモダンな仕上がりになりました。

最後は一輪の水仙と一枚のニューサイランだけの花あしらいです。

ニューサイランを花器の形に添うように添わせ、中央に葉を取り除いた水仙を添えました。こうしたシンプルな花あしらいの場合、花留めは最小に留めたいので、ニューサイランの葉に少しだけ切り込みを入れて、その間に水仙を差し込んでいます。少ない本数花を素敵に見せる方法を考えるのも花あしらいの醍醐味のひとつです。

ここまで、水仙とニューサイラン、そして同じ花器を使って5種類の花あしらいを作りましたが、どれも全く違うイメージに仕上げました。絶対これ、というルールはありませんので、植物の姿が活きる「かたち」を考えながら、自由に楽しんでいただけたらと思います。

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水仙の葉組み

水仙はそのままでも美しい花ですが、ひと手間かけることで、表情を変化させることもできます。ここでは水仙の葉を組み替えるおおまかな手順をご紹介します。

1. 水仙の下部にある「袴(はかま)」と呼ばれる白い部分を指でよくもんで、取り外しやすくします。

2.袴がちぎれないように、ゆっくり下に向かって引き抜きます。取り分けた袴は水の中に入れておきます。

3. 2で袴を外すと花の付いている茎や葉がバラバラになりますので、一気に崩さず、元の順に並べて置きます。このとき葉の間に土が付いていることが多いので、濡らしたペーパータオルなどでふき取っておきましょう。花や葉の高さもこのときに決めて、カットしておきます。

4. 3で並べておいた順に茎と葉を組みなおし、取っておいた袴を元通りに戻して完成です。(束ねたものを斜めにカットしておくと、袴に戻しやすくなります)

「水仙」の基本情報

□出回り時期:11月中旬~4月

□香り:あり

□学名:Narcissus

□分類:ヒガンバナ科スイセン属(ナルキッスス属)

□和名:雪中花、雅客(がかく)など

□英名:Narcissus

□原産地:イベリア半島を中心とした地中海沿岸地域

 

新井光史

神戸生まれ。花の生産者としてブラジルへ移住。その後、サンパウロの花屋で働いた経験から、花で表現することの喜びに目覚める。

2008年ジャパンカップ・フラワーデザイン競技会にて優勝、内閣総理大臣賞を受賞し日本一に輝く。2020年Flower Art Awardに保屋松千亜紀(第一園芸)とペアで出場しグランプリを獲得、フランス「アート・フローラル国際コンクール」日本代表となる。2022年FLOWERARTIST EXTENSIONで村上功悦(第一園芸)とペアで出場しグランプリ獲得。

コンペティションのみならず、ウェディングやパーティ装飾、オーダーメイドアレンジメントのご依頼や各種イベントに招致される機会も多く、国内外におけるデモンストレーションやワークショップなど、日本を代表するフラワーデザイナーの一人として、幅広く活動している。

著書に『The Eternal Flower』(StichtingKunstboek)、『花の辞典』『花の本』(雷鳥社)『季節の言葉を表現するフラワーデザイン』(誠文堂新光社)などがある。

花毎でお楽しみいただける新井の連載 夢の花屋

Text・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子