経常収支黒字は「我慢の対価」
家計簿が黒字だということは、贅沢を我慢して給料の範囲内で暮らした、ということです。その結果、金持ちになったとしても、周囲から批判されるべきものではありません。経常収支黒字も同じです。
かつて、米国から日本の経常収支黒字を批判されたとき、「賭けマージャンで勝ち続けたら友人がいなくなる」と心配した人がいましたが、家計簿の黒字と賭けマージャンの勝ちは違います。賭けマージャンの勝ちは他人が働いた金を使って自分が贅沢をするわけですから、友人がいなくなるのは当然であって、家計簿の黒字とはまったく異なるのです。
当時の米国は、「日本が製品を輸出しすぎるから米国製品が売れず、米国民が失業している」ことを批判していたのです。それなら素直にそういってくれればよかったのに(笑)。
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経常収支黒字が円高をもたらすとは限らない
経常収支黒字は、日本人が外国人との間で受け取る外貨が支払う外貨より多いことを示しています。そうであれば、受け取った外貨を売る人が増えてドル安円高になりそうですが、そうとは限りません。
輸出企業は、受け取った外貨を売って社員に給料を支払いますし、輸入企業は輸入代金のドルを買うので、輸出入の貿易収支はドルの値段に直結します。しかし、日本の経常収支が黒字なのは海外からの利子配当収入が多いからです。投資家は海外から利子配当を受け取ってもドルを売るとは限らず、「利子配当を使って海外の株を買い増そう」などと考える場合も多いので、ドル安円高になるとは限らないのです。
最後になりましたが、日本は経常収支黒字が続いているので、海外に持っている純資産は巨額です。資産が巨額で、借金は少額です。「国は赤字で借金が巨額だ」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、それは「地方公共団体ではない、中央政府」が民間部門との取引で赤字で借金をしているということですから、日本国と諸外国との取引についての話ではありません。
誤解を避けるために「中央政府は」と言うべきだと筆者は考えているのですが、財務省は危機感を煽るために「国は赤字」と言っているのかもしれませんね(笑)。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家