追い詰められた娘の“とある行動”で、Aさんの怒りはピークに

その後、Aさんの期待とは裏腹に、Cちゃんは成績が伸び悩んだまま、小学6年生になりました。

受験の日が刻々と近づき、Aさんのプレッシャーもピークに達していたある日のこと、Aさんが娘を塾まで迎えに行くと、同じクラスのママに、ためらいがちにこう話しかけられました。

「あの、Cちゃんママですよね? 本当に差し出がましいことをごめんなさい。Cちゃん、塾の小テストでカンニングしているみたいで……。Cちゃん絶対そんな子じゃないから、なにか悩みがあるのかもしれないと思って……」

「え?」

Aさんは、なにをいわれているのかすぐに理解することができませんでした。「そんなこと、うちの子がするわけないじゃない」こう返しながら、もしかして、うちの子に嫉妬しているのかしら? と思ったAさんでしたが、内心はざわざわした思いでいっぱいです。

車に乗ってすぐ、AさんはCちゃんに問い詰めました。「塾の小テストでカンニングしてるって聞いたんだけど。本当なの?」

Cちゃんが口ごもり狼狽する様子を見て、Aさんの疑念は確信に変わりました。

「なんでそんなことするの!? それじゃ意味ないってわかるでしょ!?」「そんなこと指摘されて、ママがどんなに恥ずかしい気持ちだったかわかる!?」

Aさんが声を荒げると、Cちゃんは涙を流し、「……だって、点数が悪いと怒るじゃん! あたしだって一生懸命やってるのに、怒鳴るじゃん! あたしもう、受験したくない!」

Cちゃんはそう叫ぶと、車を飛び出してしまいました。CちゃんがAさんに反抗したのは、これが初めてです。

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いまの君は「教育虐待」だと思う

すぐに夫に連絡して2人で探し回ると、結局Cちゃんは、自宅から少し離れた大きな公園にいました。

Cちゃんが寝たあと、BさんはAさんに言いました。

「最近、少しおかしいよ。僕も止めなかったのは悪いけど、独断で習い事を増やして、Cを追い詰めすぎだと思う。小学生の教育費で月15万って、いくらなんでも異常だよ。いい中学に行ったって、それで人生が決まるわけじゃないし」

「恵まれた家庭で育ったあなたにはわからないでしょうね。希望の大学に行きたくても行けなかった私の気持ちなんて」

「それはつらかったと思うよ。でも、Cの人生は君の人生じゃない。Cが君の理想の学校に入ることより、Cが楽しく充実した6年間を過ごすことのほうが大事じゃないかな?」

「でも、がんばれば叶う状況なのに、がんばらないなんて……」

「だから、Cは十分がんばっているだろう!? カンニングなんて、Cがどれだけ追い詰められているかわからないのか!」

Bさんは珍しく声を荒げます。

「いまの君は、自分の理想をCに押しつけているだけだ。正直、教育虐待だと思う」