相続人がいない場合、被相続人の財産は国に帰属するのが一般的です。しかし、特別な事情がある場合には「特別縁故者」として財産を受け取ることが認められる可能性があります。では、どのような人が特別縁故者と認定され、財産分与を受けられるのでしょうか。本記事では、特別縁故者の定義や認定条件、申立ての手続きなどについて詳しく解説します。

特別縁故者とは? その意味と重要性

特別縁故者とは、相続人がいない場合に、特別に財産を受け取る資格がある人を指します。

通常、相続人には配偶者や子ども、親、兄弟姉妹が含まれますが、こうした法定相続人がいないケースもあります。例えば、被相続人が独身で親族が全員他界している場合です。民法で定められているこの制度は、通常の相続の枠を超え、故人と深い関係があった人に特別に相続の機会を与えます。

法定相続人不在時の財産の行方

被相続人が亡くなった際、相続財産は民法に基づき、法定相続人がそれぞれの法定相続分に従って相続します。

配偶者と子がいる場合、配偶者が2分の1、残りの2分の1を子が均等に分けます。

配偶者のみで子がいない場合、配偶者が3分の2、残りの3分の1を父母が均等に分けます。

配偶者も子も父母もいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人となり、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が残りを均等に相続します。

法定相続人がおらず、有効な遺言書もない場合、遺産は国庫に帰属し国のものとなるのが原則です。ただし、被相続人と特別な関係があった人がいる場合には「特別縁故者制度」により、その人に財産が分配される可能性があります。

遺言書に記載された人の権利

もし法的に有効な遺言書があれば、そこに記載された人は、法定相続人でなくても「受遺者」として財産を受け取れます。この場合、受け取りは「相続」ではなく「遺贈」として扱われます。

法定相続人がいない上に有効な遺言書もない場合、被相続人の財産は国に帰属し、最終的に国の所有となります。

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誰が特別縁故者になれるのか

特別縁故者とは、民法で定められた特定の条件を満たした人だけが認められる存在です(民法第958条の2)。そのため、誰でも該当するわけではなく、基準に沿った関係性が確認されなければ特別縁故者としての資格は得られません。

被相続人と生計を共にしていた人

特別縁故者として認められる条件の一つに、「被相続人と生計を共にしていた人」というものがあります。具体的には、同じ世帯で暮らしていた内縁関係の夫や妻、事実上の養子関係にある人、または被相続人の生活を支えたり面倒を見たりしていた人が該当します。

このような生活状況があった場合、特別縁故者として財産分与が認められる可能性があります。なお、生計を共にしていたことを証明するには、同居期間が確認できる住民票が役立ちます。

被相続人の療養看護に努めた人

「被相続人の療養看護をしていた人」というのも、特別縁故者として認められる条件の一つです。例えば、一緒には暮らしていないものの、定期的に被相続人の看護を行っていた人が該当します。

ただし、看護師や家政婦として報酬を受け取っていた場合は、その報酬を超えた献身的な看護が求められます。単なる業務としてのケアではなく、家族のような愛情をもってサポートしていたことが認められることが必要です。

療養看護に努めた証明として、医療費や介護費の領収書、訪問時の写真、看護の様子が伝わるメールなどがあると有効です。

その他の特別な関係者

「被相続人と生計を共にしていた人」、「被相続人の療養看護に努めた人」のほか、「その他被相続人と特別の縁故があった人」も特別縁故者として認められます。

例えば、被相続人の身元引受人や後見人として精神的な支えになっていた場合や、長年にわたって仕送りを続けたり、事業のサポートをしたりしていたなど、関係が深かった人が該当する可能性があります。

特別な縁故を証明するには、やり取りの記録となるメールや手紙、日記のほか、財産を譲る意思が示された文書などが役立ちます。

法人が特別縁故者になる場合も

公益法人や学校法人、宗教法人、地方公共団体、さらには法人格のない団体なども、特別縁故者として認められることがあります。

被相続人が生前にこうした組織の発展に貢献していた場合、裁判所がその法人を特別縁故者と判断し、財産分与を認めるケースもあるのです。