特別縁故者として認められるまでの手順

特別縁故者として認められるには、家庭裁判所への申し立てが必要です。

たとえ被相続人の内縁の妻であり、他に相続人がいない場合でも、国が自動的に特別縁故者と認定してくれるわけではありません。生前のサポートや葬儀への尽力があったとしても、特別縁故者として財産を受け取るには、家庭裁判所に申し立てを行い、認定されることが必須です。

相続財産管理人の選任と役割

相続人がいない場合、まず被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続財産管理人の選任」を申し立てる必要があります。

相続財産管理人は、被相続人の財産の調査や管理、債務の清算などを行う重要な役割を担います。管理人は利害関係者からの申し立てに基づいて家庭裁判所が選任し、その後、債権者への配当などを適切に行います。

申立書に必要事項を記入し、所定の書類を添えて家庭裁判所へ提出することによって申し立てできます。必要な書類や費用については、家庭裁判所の「相続財産管理人の選任」に関する案内を確認してみてください。

法定相続人の捜索方法

相続財産管理人が家庭裁判所に選任されると、その情報が官報に公告され、法定相続人の捜索が始まります。

公告の期間は6ヵ月で、その間に法定相続人が見つかれば、どれほど疎遠であってもその相続人が遺産を受け取る権利を持ちます。

財産分与申立ての流れ

法定相続人が官報公告から6ヵ月経っても見つからない場合、その不存在が確定します。この段階で初めて「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」が可能となります。なお、申立ては官報公告の満了から3ヵ月以内に行う必要があるため、期限を忘れないようにしましょう。

家庭裁判所が特別縁故者として認めれば、被相続人の財産はその特別縁故者に分与されます。

申立ての時期と期限

申立ては、官報公告満了から3ヵ月以内に行わなければなりません。この期間を過ぎると申立ての権利を失うため、早めの対応が必要です。

必要な書類と費用

申立てには以下の書類と費用が必要です。

1.書類

・申立書(1通)

・申立人の戸籍謄本(法人の場合は資格証明書など)

・被相続人の戸籍(除籍)謄本

・特別な縁故を証明する資料

・相続財産目録

・親族関係図(親族として申立てを行う場合のみ。関係を示す現在戸籍、除籍、改製原戸籍謄本も必要)

2.費用

・収入印紙:800円

・連絡用の切手代:裁判所によって異なるため、各地の裁判所一覧から確認

特別縁故者の認定と財産分与決定

特別縁故者としての申し立てが認定されると、被相続人の遺産がその特別縁故者に分与されます。

もし認定されなければ、相続人がいないと判断され、遺産は国庫に帰属することになります。

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特別縁故者が知るべき「相続税」における4つの注意点

特別縁故者が財産を受け取る場合、「遺贈」として扱われますが、これも相続税の対象です。

ただし、通常の相続と異なる点があるため、特別縁故者が遺贈を受ける際には、以下の4つのポイントに注意してください。

基礎控除額と課税の仕組み

相続税は、遺産総額から「基礎控除額」を差し引いた額に対して課される税金です。

通常、基礎控除額は「3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)」で計算されます。しかし、特別縁故者が相続する場合は法定相続人がいないため、基礎控除額は一律で3,000万円となります。

そのため、遺産が3,000万円以下であれば相続税はかかりませんが、3,000万円を超える場合は課税対象となり、申告が必要です。

適用外となる控除と特例

特別縁故者が財産を受け取る場合、法定相続人だけに適用される各種税額控除は利用できません。

ここでの税額控除とは、基礎控除以外の「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」「未成年者控除」などを指します。これらの控除を受けるには、被相続人の生前に「婚姻届を提出する」「養子縁組を行う」など、法的に家族関係を築いておく必要があります。

相続税の割増と追加課税

特別縁故者が財産を引き継ぐ場合、相続税に「2割加算」が適用されます。

この2割加算は、被相続人の配偶者や子ども、両親以外の人が遺産を受け取る際に課される追加課税です。特別縁故者は、この加算の対象となり、通常の相続税にさらに2割が上乗せされます。

ただし、先述の通り相続税の基礎控除である3,000万円が適用されるため、相続を受けた合計が3,000万円以内であれば課税対象外です。

申告期限と評価時点の特殊性

特別縁故者が財産を引き継いで相続税がかかる場合、申告が必要です。通常の相続税申告期限とは異なり、特別縁故者の場合は「特別縁故者の財産分与の審判が確定した翌日から10ヵ月以内」が申告期限となります。

この点を見落とすと、延滞税や状況によっては加算税が発生するため、期限には特に注意が必要です。