『LIFE AND TRUST」とは?
2011年、マンハッタンのチェルシー地区にある「McKittrick Hotel」と呼ばれる廃ホテルが改装され、イマーシブシアター『Sleep No More』が登場した。開演から大反響を呼び、演劇界の各賞を受賞。10年以上経った現在もロングランを続け、ニューヨークを訪れる観光客や地元の演劇ファンから大きな支持を得ている。この『Sleep No More』を手がけたプロデュース集団Emursiveは、その後のイマーシブな、あるいはインタラクティブな劇場演出に与えた影響は計り知れない。そして2024年、Emursiveが満を持して世に放った新作が『LIFE AND TRUST』なのだ。
『Sleep No More』は、精巧な美術を施し圧倒的な世界を創り出していたが、最新作はそのスケールをさらに超える。今回は、なんとニューヨーク・ウォール街にあるシティバングのビルをまるごと大改装。1階から地下6階までをすべて演劇の舞台にしてしまった。ニューヨーク・タイムズの記事によれば、この改装とプロダクションの総費用は、細部にわたるセット構築と技術的な要求の高さから、数百万ドルに及んだという。
【参照: New York Times, 2024年7月15日】
https://www.nytimes.com/2024/07/15/theater/life-and-trust-immersive-theater.html
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『LIFE AND TRUST』の観劇方法
さて、先ずは観劇方法の紹介。オフィシャルサイトで購入するチケット代は、約140$で、入場する時間帯が決まっている。さらに、早めの入場で、カクテルなどを楽しめる「PRE SHOW COCKTAIL HOUR」にアップグレードも可能。
当日は、指定した入場時間の直前にエントランスに集まる。会場は旧シティバンクビルとあって、ウォールストリートのど真ん中。普段、馴染みのない金融街を歩いていると、すでにいつもの観劇とは少し違った感覚を覚える。
ゲート前で待っていると係員が会場へエスコートしてくれる。受付を済ませ、荷物はクロークへ。スマホは劇中で使用できない鍵付きのバッグに入れるか、クロークに預けることになる。
再度IDチェック(チケット照合) を行い、しばらく薄暗い廊下を歩く。両サイドには、「LIFE AND TRUST銀行」の宣伝ポスターがならび、1929年の世界恐慌当時の世相を伝えるシニカルな広告コピーがのっている。
廊下を抜けると「コンウェル コーヒー ホール」にたどり着く。天井が高く、息を呑むような 1930 年代風の壁画が目を惹く空間だ。ここは、バーとなっていて、実際にカクテルやビールを注文して、しばらく友人らと談笑することが出来る。さらに、演者とおもわしき“係の人”が突然話しかけてきて、銀行のこと、あるいは1929年代の世相について世間話を持ちかけてくる。そう、すでに演劇は始まっているのである。
その後、渡されたカードの番号が呼び出されると、この銀行の頭取に会うために奥の部屋に案内され、いよいよ本格的に物語の中に没入していくのだ。