日常を、人生を、もっと豊かに。芸術鑑賞のチケットサブスク「recri」が起こす変革とは?

「recri」は、ユーザーの好みに合った舞台や展覧会のチケットを、毎月届けるサービスだ。たとえ興味はあっても、何を選べばいいのかわからない“芸術鑑賞初心者”と、新しい顧客との出会いを必要としている“興行主”をつなぐ、新しいプラットフォームとも言える。特筆すべきは、数ある公演や展示の中から “本当に面白い”と思うものだけを厳選する、その“目利き”力だろう。ユーザーデータを活用した独自のマッチングシステムで、一人ひとりの価値観や好みに合わせた作品を導き出す。これまでのエンタメ業界の常識を打ち破る「recri」は大いに期待を集め、2025年には、関西圏にもサービスを広げるという。

世の中にはもっと面白いエンタメがある。コロナ禍のもどかしさから生まれた構想

「recri」の構想が生まれたのは、コロナ禍のこと。当時、舞台演劇や音楽ライブ、美術展などの多くは、不要不急とされ、延期や中止を余儀無くされた。いくつもの劇団が潰れ、多くの役者やアーティストたちが廃業に追いやられていく中、まさに日本のエンタメ業界は危機を迎えていた、あのときのこと。

もともとテレビや舞台でダンサーとして活躍していた栗林さん。大学卒業後は、電通にクリエイターとして入社し、さまざまな企業やブランディングの仕事に関わってきた。20代最後に独立したのは、「大好きなエンタメ業界のために、何か力になりたい」という想いがあったからだという。

「僕自身がダンサーとして活動していたこともあり、周りには、役者や脚本家、音楽をやっている友人などが多くいました。だから、彼らの苦労はよくわかっていたんです。特に集客は本当に大変なことで、『チケットノルマのために、真夏の炎天下にチケットを配らなきゃいけない』と嘆く友人の姿を見ながら『なんとかできないだろうか』と、常に思っていました」

一方、世間では、演劇など舞台芸術はどこかハードルが高いというイメージが根強く、舞台や演劇を楽しむのは一部の層だけに限られている。特に、演劇業界には「わかる人だけ来てくれればいい」という、「一見さんお断り」的な雰囲気が、新規層を遠ざけていた面もあると栗林さんは指摘する。

「多くの人は、『やることがない』『何か面白いものはないか』と言いながら、Netflixを観るだけで終わってしまう。世の中にはもっと面白いエンタメがたくさんあるのに…と、もどかしさを感じていました」

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業界変革のタイミングでサービスをローンチ。「救いたい人の顔」がモチベーションに

面白い体験をしたい世間と、集客に悩む興行主。そんなジレンマを抱える中に、コロナ化の大打撃があり、エンタメ業界は「これまで通り」ではいられなくなった。これを栗林さんは「変革のタイミング」と捉えたのだ。

「アパレルやワイン、コーヒーなど、他の業界にはこうしたサブスクサービスはすでにたくさんありました。しかしエンタメ業界には、似たようなサービスがなかった。というのも、座席やスケジュールなどは変動性が高く、管理があまりにも大変だからです」

「recri」では、それを乗り越えるためのシステムを開発し、構想から2年かけてサービスを実現。強いモチベーションになったのは、「明確に救いたい人の顔が浮かんでいたから」だと、栗林さんは語る。

「これまで苦労を抱えていた友人たちにも声を聞きながら、サービスの内容を構築しました。“現場”で活躍する彼らの協力があったからこそ、新参者が参入するのはなかなか難しい業界にも受け入れてもらうことができました」