Halay Alex / Shutterstock.com
自分の評判を上げるため、自分より地位や評価の高い人と付き合う「スローニング」と呼ばれるデートが、最近若者の間でトレンドになっているという。女性が社会的地位や経済的豊かさを求め、格上の男性と結婚することは歴史的によく行われてきたが、ソーシャルメディア時代の若者には、別の理由があるという。
◆王座は自分では無理! 相手のステータスを重視
米ニュースサイト『デイリー・ドット』によれば、スローニングが注目され始めたのは昨年11月ごろからだという。この言葉の語源は、「王座(スローン:throne)」で、王族が地位や政治的駆け引きのために結婚していた歴史に由来している。
オンライン・デート・サービスのデータを用いた2018年の研究では、男女とも平均して25%ほど自分より条件の良い相手を選ぶことが分かった。スローニングは、パートナーとの関係を通じてステータスを追い求めようとする、人間の習性を示すものだ。
◆SNSの影響? 上昇婚との違い
スローニングは、特にZ世代の間で流行し、SNS「ティックトック(TikTok)」で広まっているという。実際は、女性が高いステータスの男性と結婚する「上昇婚」は古くからあり、若い世代はこのコンセプトを再発見したと言える。上昇婚をする理由はお金と快適さのためで、ここが明らかに相手のステータスと関係していた。
一方、今日のZ世代は、お金よりもステータスそのもの、また自分の評判やエゴを重視しているという。ニューヨーク市立大学のブルース・Y・リー博士はスローニングを「おもに自分の評判を高めて自尊心を増大させるために誰かと付き合うこと、つまり相手を現実の人間として気にかけるのではなく、他人に見せつけるために王座に座らせること」と定義している(デイリー・ドット)。
米サイコロジー・トゥデイ誌は、デートに限らず、職場や学校でも、人気や影響力のある人々と付き合うことで、人気者になったり、自分をより重要な存在に見せたりすることを目指す人は多いと述べる。上昇婚の目的は自分の生活状況を改善するためだが、スローニングの目的は相手と一緒にいることでその威光を浴びることだと説明している。
英ニュースサイト『インディ100』は、定期的にソーシャルメディアに投稿する人の社会的地位を推測するのは容易で、フォロワーの多さが社会的地位の象徴にもなっていると述べる。今や名声を得るのに必死な人を表す「クラウト・チェイサー(影響力のある人と関わり、自分を実力以上に見せようとする人)」というスラングまであり、スローニングにはインフルエンサーが絶大な力を持つソーシャルメディアの影響が大きいようだ。
◆利用されている! スローニングのサインとは?
デイリー・ドットによれば、ソーシャルメディアのユーザーはすでに、スローニングは道徳的に許されるのか、スローニングをする人はひどく利己的なのかについて議論している。他者を利用してレベルアップすることに否定的な若者も多いようだ。
スローニングをする人の優先事項は自分の評判やエゴを高めることなので、デート相手がもしそれに気づかず、真剣にデートしている場合は問題だ。サイコロジー・トゥデイは、「あなたの評判について話したり聞いたりしたがる」「過剰にお世辞を言ったり他人にあなたの自慢をしたがる」「自己中心的で自分の評判を過度に気にしているように思える」「プライベートよりも公の場であなたに親切」「あなたの人間性に興味がなさそうで、自分のこともあまり話したがらない」「他人の評判に強い興味を持つ」などの傾向が相手にあれば、スローニングの可能性があるとしている。