大学1・2年生も含めると、4つの卒年を同時進行

――それにしても3つの卒年を同時進行でみるのは忙しいと思います。しかも、近年はオープン・カンパニーやキャリア教育など、大学1・2年生を対象にしたキャリア形成支援に着手する企業も増えています。対応する卒年が3つ以上になるケースも珍しくないのではないですか。

長谷川洋介さん インターンシップが本格化するのは主に大学3年生ですが、学生の多くがより低学年の段階からキャリア形成活動を始めたほうがいいと感じている調査結果もあります。オープン・カンパニーやキャリア教育は大学低学年でも参加可能なプログラムであるため、2年生以下に対応する場合もあるかと思います。

ただ、業務負担が増える可能性がある一方で、必ずしも3年生用と2年生用にプログラムを分ける必要はありません。企業としては学生に対してより早い段階で自社の魅力を訴求して企業認知の向上につなげることができ、結果として採用の面で良い効果を期待できるメリットも考えられます。

より低学年からキャリア形成活動に参加したほうがよいと感じる学生側の意向ともマッチするため、必ずしもデメリットばかりとは言い切れないでしょう。

――「子どもの大事な行事を重なって…」などの「人事はつらいよ」という担当者の悩みに報いるには、企業はどうすべきだと考えますか。

長谷川洋介さん 少ない人数、限られた人員構成の中で採用業務を進めるために「面接官は現場役職者に任せている。面接官には面接官研修を実施し、自身は裏方に徹している」という声もありましたが、採用部門外の社員を動員し、協力してもらうことで、任せられる業務は切り出して任せていくことも重要です。

また、業務をアウトソースしたり、採用管理システムを導入して業務を自動化したりするケースや、説明会や一次選考をWebで行なうなど、業務をオンライン化する工夫を行っている企業もあります。

AIを活用することで採用業務を効率化する方法もあります。「求人の文章の作成」や「企業紹介等のパワーポイントや動画が生成できるとよい」といった声もあり、今後AIの技術が発展するにしたがって、採用現場の負担を軽減できるような状況が生まれてくる可能性はあると思います。

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企業は、学生が就活に生成AIを利用することに好意的

――ところで、採用担当者がこれほど人手不足だという現実を考えると、就活生は「生成AIをもっと積極的に活用しても大丈夫」ということにならないでしょうか。エントリーシートなどで生成AIを使っていると見抜かれるとヤバイのではないかという不安が、就活生にあると聞きます。

長谷川洋介さん 学生は就活に生成AIを利用しないほうがよいという企業は少数派で、約6割が活用に好意的です。

ただ、「そのままアウトプットを使うのはNG」や「楽(らく)をする目的ではなく、論点や観点の洗い出しをAIに補助してもらい、自身の考えを深堀してから選考に参加してくれれば、企業理解がより効果的に行える」など、あくまで補助的な利用を想定しています。

また、学生が生成AIを使うことへの「対応の必要性を感じない」という企業がほとんどです。検討している対応として多いのは「面接でエントリーシートの内容と異なる質問をする・深堀質問をする」です。志望動機などをAIのアウトプットに頼り切って作成し、面接での受け答えに違和感があれば見抜かれる可能性は高いと言えます。

ですから、採用担当のマンパワー不足が学生のAI利用に影響を与える、ということは考えにくいかもしれません。