会社設立は、新たなビジネスをスタートさせる大切な一歩です。しかし、手続きや準備を誤ると、思わぬトラブルやコストが発生し、事業運営に悪影響を及ぼすことがあります。会社設立で失敗を防ぐためのポイントとして、今回は「適切な事業目的の決定」を見ていきましょう。設立支援実績1,000社以上の加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。

適切な事業目的設定の重要性

事業目的は、会社の運営方針や活動範囲を示す「顔」となるものです。適切に設定することで、次のメリットが得られます。

・会社の信用力向上:銀行や取引先は、事業目的から会社の方向性や信頼性を判断します。目的が不明確だと、取引先が不安を感じる可能性があります。

・法的リスクの回避:定款に記載のない事業を行うことは法律上問題となる可能性があるため、実際に行う予定の事業を正確に記載することが大切です。

・銀行口座開設の円滑化:事業目的が明確であれば、銀行審査がスムーズに進みます。不必要に幅広い目的を記載すると、かえって疑念を招く場合があります。

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事業目的は「実際に行う事業」を中心に記載する

「将来を見据えた幅広い事業目的を設定すること」が推奨される場面もありますが、あまりに多岐にわたる目的を記載すると、次のリスクが発生します。

(1)会社の評価に影響を与える

・何をしている会社かわからなくなる

事業目的が過剰だと、「この会社はどの分野で専門性を発揮しているのか」が不明確になります。特に取引先や銀行の担当者からは、「信用できない」という印象を持たれる可能性があります。

(2)銀行審査やヒアリングの煩雑化

・ヒアリングの頻度が増える

銀行口座を開設するときは、事業目的に基づいてヒアリングが行われます。目的が多いと、「本当にこれらの事業を行うのか」「資金がどう使われるのか」といった質問が増え、審査が長引くことがあります。

・場合によっては口座開設に悪影響

銀行は資金洗浄リスクや不正利用を避けるため、会社の活動内容を厳しく審査します。目的が幅広すぎると、不審に思われ、口座開設が難しくなる場合もあります。

(3)書きすぎによる実務的な支障

・取引先からの疑念を招く

例えば「ITサービス」だけでなく「不動産管理」や「飲食業」といった異なる分野の事業を含めて記載すると、「専門性がなく、実績が曖昧な会社」と評価されるリスクがあります。実際に行っているのであれば記載することに問題はありませんが、「これから行うかもしれない」というだけで異なる分野の事業を多く記載するのはデメリットしかありません。