やるべき仕事を終えたら見事な定時ダッシュ

午前中の仕事の合間、健太郎さんは隙間時間を見つけては、記事のタイトル案と構成案を考える。会社のPCで自分のサイトにログインをしてはバレてしまう可能性があるため、手帳に手書きで、仕事のメモをするふりをしながら行われる。

彼の「一見仕事をしてるように見えるのに、実際は全然違うことをしている」スキルは、達人の領域だった。たまにトイレに行くふりをして、個室でスマホをいじりながら文章を書き進めることもある。

12時、ランチタイムになると、健太郎さんは1人で社外のカフェに向かう。簡単な食事をしながら自分のノートパソコンを開き、ブログの更新作業を行う。午前中のメモを元に、記事構成を完成させて、外注しているライターたちに指示を飛ばす。同僚との交流を避けるのは、昼休みの貴重な時間を、自分の作業にあて、没頭するためだろう。

午後の業務中も、健太郎さんは本業に支障が出ないようにしつつ、頭の片隅では常にブログのことを考えている。

会議中にもふとアイデアが浮かぶと、手元のメモに書き留めることを欠かさない。必要な業務は手早く終わらせ、ブログに関する時間を少しでも多く確保する。

午後6時、定時になると、健太郎さんはさっさと退社の準備をする。残業を滅多にしない健太郎さんへの会社の目は厳しいが、業務時間内でやるべきことをこなしているので文句は言えない。

オフィスを出ると、再びスマホを取り出す。通勤電車の中では指示を出したライターたちへの返信や、文章のフィードバック、SNSでの投稿活動を行う。彼のスマホには、多くのフォロワーからのメッセージが届いており、それにひとつひとつ丁寧に対応する。

「定時ダッシュ。お見事!」

「お見事ですか、それ?」

僕にはわかる。たとえ自分の仕事がもうないとしても、皆が仕事をする中、1人だけ定時で帰宅するのはプレッシャーが強くかかる行為だ。上司が残っているならなおさらそうだ。それを押し通している彼の意志の強さは称賛に値する。

「なんか、今日の智也さんは少しテンションが変ですね」

「僕が会社でしたい理想的なムーブを実演しているからね。そりゃテンションも上がるよ」

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副業で成果を出すなら「副業」ならぬ「複業」の意識で

月収100万円超え、調子がいい月は300万円も

帰宅後の夜7時、健太郎さんは夕食を簡単に済ませると、再びパソコンの前に座る。ここからが彼の本番だ。外注のライターには任せられない重要なブログの記事を書き進めたり、リライト(修正作業)を行う。合間に来るライターからの連絡にも素早く返信をする。

もともとは全ての作業を自分で行っていた健太郎さんだったが、副業収益が増えていくのをきっかけに、外注もし始めた。つまり、「自分がやらなくてもいいことは、お金を払ってでも誰かにやってもらう」ということで、この戦略は彼にピタリとハマった。

はじめは外注をしても思い通りのものが出てこず、修正だらけで「これなら自分でやった方が早いぞ」と頭を抱えていたりもしたが、未来のことを考えグッと堪え、粘り強く外注先を教育し、同時にマニュアルも整備していった。

その甲斐もあり、今では万全の体制ができ上がっており、それが彼のブログアフィリエイトのビジネスを加速させた。月収は外注費を差し引いても100万円を超える。調子がいい月は300万円を超えることだってある。

夜12時を過ぎ、ようやく一日の作業を終えた健太郎さんは、次の日の計画を立てる。新しい記事のアイデアや、改善点をメモに書き留め、明日への準備を整える。

最後に今日1日の収益を確認して口角を上げる。少し疲れた表情を浮かべながらも、満足感にひたりつつベッドに入った。

しかし、スマホの通知を確認すると再びベッドから起き上がり、PCのスリープを解除した。ライターから急ぎの連絡があり、それの対応を行うのだ。眠い目をこすりながら、その対応は深夜にまで及んだ。

圧倒的なハードワーク

「いや、ずっと働いてるじゃん!」

公園のベンチで目を覚ました。叫んでしまい慌てて周りを見渡すが、小鉄の言う通り、誰も来なかったようだ。

ゆったりとノビをしながら小鉄が言った。

「智也さん、はっきり言って、副業で成果を上げる人たちからすると、これは〝普通〟です。彼はもう3年以上この生活をしています」

「嘘でしょ!?」

「嘘じゃないです」

「でもさ、FIREした人たちの発信を見てると、かなり優雅な生活してるよ」

「あれは、そういう見せ方をしているという側面と、ある程度成果を出すと楽できるという側面の2つがあります。副業の種類によっては、10万円を稼ぐ労力と、100万円を稼ぐ労力に大きな違いがなかったりしますし、ある程度の仕組化もできるようになりますから」

あまりにも違う世界の話で唖然としてしまう。しかし、FIREする人からするとこれも「当たり前」の基準なのだろうか。

「ただいずれにせよ、立ち上げてから軌道に乗せるまで、成果を出す人は圧倒的にハードワークをしていることが多いです。副業というより、意識としては〝複業〟でしょうね」

「確かに、どっちが本業? って感じだったね。もはや副業のほうがメインに感じたよ」

「もちろん、はじめは1日1時間からでいいと思います。誰もが健太郎さんみたいな1日を過ごせるわけではありませんから。しかし、〝副収入で2、3万円ほしい!〟みたいな人ならともかく、FIREを目指すのであれば、1日1時間の副業ではどうにもならないのはわかってもらえるかと思います」

株式会社HF 代表取締役

ヒトデ

※本記事は『1万回生きたネコが教えてくれた 幸せなFIRE』(徳間書店)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。