春蘭の育て方のポイント

用土

用土は、保水性と水はけのよさを重視し、粗めの軽石を主体とするか、赤玉土を混ぜた混合土にしましょう。東洋ラン専用の培養土を利用するのもおすすめです。

水やり


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用土が乾いたら鉢底から流れ出すまで水を与えます。その際は、鉢の表面だけでなく、内部の用土までしっかりと乾いていることを確認しましょう。春蘭は水を与えすぎると根腐れしやすいので、乾いているときと水やり後の鉢の重さを把握しておき、水やりのタイミングの参考にしましょう。

また冬期は鉢内部の乾燥が緩やかになるので、水やりは控えめに行います。暖かい日の午前中に、表土が濡れる程度の水やりをすればよいでしょう。

肥料


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施肥は、4月頃と9月頃に緩効性肥料を与えるようにしましょう。また新芽が成長し、翌年の花芽を形成する4~6月と、花芽充実期の9~11月には、液体肥料を2週間に1回を目安に与えるのがよいでしょう。緩効性肥料は、できるだけ株から離して置くことで肥料焼けを予防できます。

注意する病害虫


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【病気】

被害として一番挙げられるのはウイルス病です。その多くが株分け時などに使った刃物から感染するというものです。葉に斑点ができたり、かすり模様が出てきた場合は、ウイルス病の可能性があります。一度ウイルスに感染してしまうと薬などでは対処できないので、処分するしかありません。使う刃物の消毒をしっかりと行い、予防に努めましょう。

また高温多湿の時期は根腐病や軟腐病、低温多湿の環境であればカビ病にも注意が必要です。そのような時期は水やりに気をつけ、風通しのよい場所で管理し、定期的な薬剤散布で予防しましょう。


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【害虫】

風通しの悪い場所などではハダニやナメクジが発生することがあります。また花芽形成時にアブラムシが付くこともあります。見つけ次第、捕殺や薬剤散布を行うなどして対処しましょう。地植えの場合は野生動物による食害もあるため、心配なら防護ネットを張るなどの対応をしましょう。

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春蘭の詳しい育て方   

苗の選び方

苗を選ぶ際には、バルブや葉、株立ちを見ましょう。バルブが大きく、葉が多いものは、元気な苗の特徴です。株から立ち上がっている茎が多いかどうかも、勢いのある苗を見分ける目安になるでしょう。

根の状態を見ることができる場合は、なるべく根が大きなものを選ぶのがおすすめです。 

なお、春蘭は基本的に苗から育てます。種子を発芽させるためには専用の設備が必要なので、一般的には行われません。

植え付け・植え替え


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春蘭の植え付けの適期は、花が終わった後もしくは秋です。植え付けをする前には、バルブや根の状態をチェックしておきましょう。傷んでいるバルブや根、葉は剪定し、切り口を清潔にしておきます。

植え付ける際には、バルブが1~2cm埋まるくらいを目安にしましょう。

植え替えの適期は、4~5月の花後です。おおよそ3年ごとに植え替えると、根詰まりを防げます。

鉢を株から外したら、根の土を落とし、枯れた根があれば取り除いておきます。株が込み入っていたり、傷ついている場合は、バルブごと切り離しましょう。

根やバルブ、葉を切る際は、切り口から病原菌が入らないように注意が必要です。使う刃物は、アルコール消毒あるいは火であぶる消毒を行いましょう。

日常のお手入れ

春蘭の日常的なお手入れは、主に古葉外しと花がら摘みです。

春蘭の葉は2~3年で新しくなるので、古い葉は摘み取りましょう。また、花が咲き終わったら、しぼんだ花を摘み取ります。

夏越し・冬越し

春蘭は夏場も戸外で育てられます。しかし、強い日差しで葉焼けする恐れがあるので、真夏は70~75%以上の遮光ネットを張りましょう。

また、春蘭はランのなかでは珍しく、屋外でも冬越しが可能です。ただし、凍結による葉や根の傷みを避けるため、真冬は無加温ハウスや棚下で管理しましょう。また、マイナス5℃を下回る場合は室内に移動するのもおすすめです。ただし、花の生育のためにはある程度の低温が必要になります。室内で管理する場合は、凍結しない程度の寒さに一定時間あてましょう。

増やし方

春蘭を増やしたいときは、株分けを行いましょう。株分けとは、小木や多年草の株を分割して、数を増やすことを指します。植え替え時に株が大きくなっていたら、株分けのタイミングです。

株分けをする際は、まず春蘭の株を土から引き抜き、根に付着した土を落とします。次に、バルブ2~3個を目安に、新しい芽がついていることを確認して、刃物で株を切り分けます。切り口は清潔に保ち、病気や雑菌が侵入しないようにしましょう。

春蘭を育ててみよう


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春蘭は古典園芸植物として多くの品種があります。通常種を地植えにして素朴で可憐な花を愛で、春の訪れを感じるもよし、さまざまな品種をコレクションしたり、自分で交配してオリジナル品種を作出するもよし、春蘭の楽しみ方は多岐にわたります。この機会に美しい春蘭を育ててみましょう。

Credit

文 / 3and garden



スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。