正月の休み期間が終わり、徐々に普通の生活に戻りつつある。
親戚たちの集まりで豪華な食事を囲んで「楽しかった!」ならば何よりだが、ふだんはあまり会わない人たちとのやりとりに「疲れた」「これが嫌だった」とゲンナリしている人も多いんじゃないだろうか。
◆「家族だからいいでしょ」“使用済み”の祝い箸を渡されて…
「使用済みの箸を使わされて最悪でした」と苦笑するのは、藤川太輔さん(32歳・仮名)だ。
昨年結婚したばかりの藤川さんは、妻の実家に帰省した際、合計30人ほどの親戚の集まりで使用済みの割り箸を使うはめになるという“洗礼”を受けた。
「僕たち夫婦は用事があったので夕方から遅れて参加したのですが、すでにみんなの飲み食いがある程度は済んでいました。席について料理を食べようと思ったら、親族が全員集まるので、新年お祝い用のちょっと豪華な割り箸(祝い箸)が足りなくなってしまったらしいんです。
『ぜんぜん普通の割り箸かフォークとかで大丈夫です!』と言ったんですが、おばあちゃんが『もう家族だからいいでしょ!』と、誰が使っていたのかわからない割り箸を軽く洗って渡してきたんです。正直、家族・親戚といってもほとんどの人が結婚式で一度顔を合わせた程度の仲なので……」
藤川さんは潔癖というわけではないそうだが、ドン引きしてしまったようだ。
「おばあちゃんが洗面所で洗ったとはいえ、一瞬だったので洗剤をつけたのかどうかもわからない。気持ち悪すぎませんか?」
結局は「はやく食べなさい、食べなさい!」と気圧されて一口二口は食べてしまったというが「せっかくの料理なのに、味なんて全く感じなかった」と嘆く。横で見ていた妻には新品の箸が配られたようだが「御愁傷様」と言われたんだとか。
◆子どもへの直箸に「やめてーーーーー」
筆者(1歳の子どもを持つシングルマザー)も年末年始に、ちょこちょこと親戚に会って食事をする機会があった。そのとき、藤川さん同様に「ちょっとやめてほしいなぁ」と思ったことがある。
それは子どもへの直箸! 何気なくやってしまう大人が多いのだが、その瞬間、心の中では「やめてーーーーー」と思っている。
ある日、みんなで外食中に子どものお子様ランチがこなかったので、筆者が未使用のスプーンで大人用のコースから取り分けて食べさせたが、それでも足りない様子でグズグズしてしまった。「いまくるから待ってて!」とあやしていたら、親戚が「これ食べさせなよ」と自身の食べかけをスッと出してきたのだ。
食べたそうにする子ども、優しい親戚……。気持ちはありがたいのだが、我が家では子どもと箸やスプーンを一切共有しないし、外でも一切してほしくない。
有名な虫歯菌うんぬんの話もあるが、そもそも筆者は料理の取り分け用の箸を使わないこと自体が嫌だし、食べ物の残りを共有するというのが生理的に無理なのだ。
筆者は「申し訳ないんだけど、子どもには大人が口をつけたものをあげていないから」と断ったが、やっぱり親戚には少し嫌な顔をされてしまった。お互いに悪気はないのだが、後味が悪かった……。
◆直箸や箸の共有が無理という人は意外と多い
自分の箸で食べているものを子どもに「はい!」とあげる行為は、本当に困る。子どもは「どうぞ!」されてしまうと何もわからないので口をつけてしまうし、食べ始めたものを「もうこれは食べちゃダメ!」は難しいのである。
当然、友人や知人には「やめて」とは言いにくいし、親戚なら言えるかもしれないが、微妙な顔をされてしまうだろう。じつは、筆者と同じように葛藤を抱えている人は少なくないのかもしれない。
年末年始はもちろん、家族や親戚が集まる場において、人によっては箸の共有や直箸が無理な場合もあると知ってもらいたい。
<取材・文/吉沢さりぃ>
―[年末年始の憂鬱]―
【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720