ドナルド・トランプ氏が米大統領に2025年1月20日に就任する。その中で安全保障面からトランプ氏は、カナダを51番目の州にして、メキシコ湾をアメリカ湾に呼び変え、パナマ運河も米国の所有とし、カナダの東にあり今はデンマーク領のグリーンランドも要衝であるとして買取を提案している。
一見戯言のように聞こえるが……
一見すると、戯言のように聞こえるが、ちょっと米国の周辺の世界地図を開くと、米本土に対してロシアからの緩衝地帯を広く設定して米本土を一層強固に守るという意図が感じられる。
もちろん、こうした構想の実現は容易ではなく、今のところ各国ともにまともに相手にしていないが、トランプ氏のことであるので、何をしでかすか分からない。少なくとも何らかのディールに使うのではないかとささやかれている。
次期トランプ政権の骨格が見えているが、国務長官にマルコ・ルビオ氏など対中強硬派が並んでいる。
中国といえば、習近平国家主席は2017年9月、1期目の当時のトランプ大統領との共同記者会見で、太平洋の東を米国、西を中国が管理し、太平洋を米中で二分しようとする中国側の膨張政策を披露したことがある。これだと、今のハワイがアメリカの西端になり、日本は中国の勢力下になる。
中国は、核心的利益としてウイグル、南シナ海、香港、台湾、尖閣を自国のものとして、それで太平洋進出という遠大な覇権構想を持っている。それを、トランプ氏が見逃すとも思えない。となると、日本に対し、カナダに次いで52番目の州にならないかと持ちかけるのは、全くあり得ない話ではない。
(広告の後にも続きます)
いっそのこと、安倍昭恵さんを外相に
この話を真面目に考える人はいないかもしれないが、頭の体操としてはいい。まず、日本として、天皇制、日本語、円を維持した上で米自治区になるのはそこそこかもしれない。まず、安全保障面では、日米同盟どころではなく核兵器保有国になるので、抑止力は格段に増す。経済面で見ると、米国との関税はなくなり、為替は円を維持するもの事実上ドルペッグとなって為替リスクは確実に減る。
ただし、日本という歴史がなくなると思うと、かなり複雑であり、心情的には受け入れがたい。したがって、日本としては、52番目の州になるのはお断りして、核兵器保有国ではなく核共有、関税は互いに低くし、為替は両金融当局が連携し為替変動を少なくするといったものに落ち着くだろう。
問題は、今の石破茂首相で大丈夫かという懸念だ。USスチールの買収の件は、バイデン政権の最後っ屁なので、実際にはトランプ政権次第だ。トランプ氏から日本が52番目の州になれば、買収はいいといわれたら、どうするのか。石破首相はトランプ氏とのパイプがないので、まともな意思疎通ができない。いっそのこと、安倍昭恵さんを外務大臣にした方がいいだろう。昭恵さんも、岩屋毅外相が行けない国で貢献したいといっているのだから。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。