多彩な表現活動で世界を股にかけて活躍。
2023年、惜しまれつつも71歳でこの世を去ったアーティスト・坂本龍一。
彼の実験的かつ先駆的な創作の軌跡に刮目。

坂本龍一さんは「時間芸術」である音楽に向き合い、「時間」と「音」についてさまざまな角度から探究し、多彩な創作活動を行ってきました。

その一端は、2000年代以降に意欲的に取り組んできた美術作品にも表れています。

代表作の《LIFE–fluid, invisible, in audible…》(2007年)では、霧に映し出される映像と、そこに流れる音が刻々と変化し続けます。

鑑賞者は映像と音の「庭」をゆっくりと巡りながら、コンサートのように一方向に進むのではない、始まりと終わりがない時間を体感することができるでしょう。

また坂本さんは、人間の営みと自然との関係にも深い関心を寄せていました。
《IS YOUR TIME》(2017年)では、東日本大震災の津波で被災したピアノを「自然によって調律された」存在として捉え直し、世界中の地震データを使ってピアノを奏でます。

雨音や風の音などの自然界の音、人工の音や音楽など、あらゆる音に等しく耳を開き、それらを芸術作品へと昇華させていく坂本さんの姿勢には、現代を生きる私たちへの静かな問いかけが込められているように感じます。

展覧会場で出会う坂本龍一さんの「音を視る 時を聴く」世界。

そこは、普段の生活では気づかない音の表情や、私たちを取り巻く時間の流れを、全身で感じることのできるまたとない機会となります。

本展を通して、私たち一人ひとりの感性が解き放たれ、それぞれの心と共鳴する特別なひとときが生まれることでしょう。

トップ掲載写真:坂本龍一+高谷史郎 ≪LIFE–fluid, invisible, inaudible…≫2007/2023年「Ryuichi Sakamoto | SOUND AND TIME」展示風景、成都木木美術館(人民公園館)、2023年画像提供:成都木木美術館

教えてくれたのは・・・
キュレーター
難波祐子さん
東京都現代美術館学芸員を経て、国内外で現代美術の展覧会企画に関わる。中国での坂本龍一の大規模個展(2021年: M WOODS/北京、23年: M WOODS/成都)のキュレーターを務める。著書に『現代美術キュレーター10のギモン』(青弓社)など。



『坂本龍一|音を視る、時を聴く』

場所:東京都現代美術館(東京都)
開催: 2024年12 月21 日(土)〜2025年3月30日(日)
開館 : 10:00〜18:00(入室は閉館の30 分前まで)
閉館 :月曜日、1/14、2/25 
*1/13、2/24は開館
050-5541-8600(ハローダイヤル)

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/RS/

こちらの展覧会にも注目!



阪神・淡路大震災30年 
企画展『1995 ⇄ 2025 30年目のわたしたち』

1995年1月に発生した阪神・淡路大震災。兵庫県立美術館の前身、兵庫県立近代美術館も甚大な被害に見舞われた。
あの日から30年を迎える節目に、6組7名のアーティストによるグループ展を開催。ここでの作品との出合いが、混沌とする現代の一筋の希望の光となるかもしれない。

開催中〜2025年3月9日(日)
兵庫県立美術館(兵庫県)

https://www.artm.pref.hyogo.jp/



『縁起物大集合  しあわせを呼ぶ日本画』

長寿の象徴である鶴や、歳寒三友と呼ばれ、めでたいもののしるしとされる松竹梅など、日本には縁起物をモチーフとした作品が多数存在。
不老不死に子孫繁栄、五穀豊穣など、さまざまな願いが込められている巨匠たちの日本画を愛でながら、新しい年の多幸を祈ってみては?

開催中〜2025年2月28日(金)
足立美術館(島根県)

https://www.adachi-museum.or.jp/