新たな挑戦
そんなある日。秋晴れのもと、義両親と夫婦4人で収穫作業に精を出し、ようやく一段落して後片付けをしていると……。ひとりのご老人が一頭の牛を連れて田んぼに近づいてきたのです。
「ああ、君だね。ウワサの元ITマンというのは……」
「えっ……?」
それは村の自治会長。実は、前々からこの地域の農作物をブランド化して全国に売り出したいと考えていたのだとか。そして、東京でITの会社に勤めていたという夫の経歴を見込んで、PR活動の依頼に来たのだと言うのです。
夫は初めは断っていましたが、「村の魅力を広めるために頑張ろう」と決意。SNSや動画サイトを駆使して、四季折々の農産物を紹介することにしました。
田舎ブームもあり、夫のチャンネルや投稿には次第にフォロワーが増加。さらにそのうちのいくつかがプチバズり、村の知名度が少しずつ上昇したのです。農産物の売り上げが増加したのはもちろん、本気で農業に携わりたい若者も村に訪れるように。喜ぶ自治会長や村人たちを前に、夫はとてもうれしそうでした。
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夢のよう
その後、なんと夫に、以前勤めていた会社からコンタクトが! それは、同社が系列企業で経営しているお店でコラボをしないかというお誘いでした。いろいろな縁が重なって、夫は再び同じ会社での仕事に携わることになったのです。
「こんな形で戻れるなんて、夢のようだよ。村に来て、皆に支えられながら立ち直ることができた」
夫は、村の皆に感謝の気持ちを伝えました。人生の転機が訪れたことで、自分を再発見し、前向きに生きる力を取り戻したようです。
そして、村の農産物はさらに人気を集め、義両親も私も多忙になりました。