みなさま、新年明けましておめでとうございます。すうすうする頭にお着物はいかがでしょうか。お正月でなくとも着たい時に着れば良いと思うのですが、理由がないとなかなかその気にならないものでございます。
<色合わせの妙>
親しい友の叔母さまがお召しになられていたお着物を譲り受けました。こんなに可愛いチェックならほどいてドレスに仕立て直したいところですが、羽織と揃えですので本来の姿がきっと一番素敵なのだろうと思います。半襟には春の黄色を選びました。帯は、母の友人でわたしにお着物を少しずつ揃えることを教えてくれた方から譲り受けた物です。帯揚げには細い縞柄を。帯締めは祖母が組んだ紺色のものを合わせてみました。祖母の帯締めは小柄で細身のからだに合わせて長さを決めたのでしょう、わたしには短めです。
随分以前のことになりますが、画家の方が絵を額装される時に、額縁と、絵とガラス板の間に挟むマットと呼ばれる紙製の枠の色を選ばれるところに居合わせたことがありました。額縁は素材や色を選びますので、絵のおもむきと飾る場所の雰囲気を思い浮かべれば、こちらがよろしいのでは、と想像がつくのですが、マットの色は白ですとかクリーム色ですとか差し支えない色しか思い当たりません。幅も少し狭くしたり、思い切って広くしたりすることで随分と印象が変わることを知りました。選択肢の多さにわたしは軽く混乱しました。画家の方は、見本の中からわたしの想像もしない色を目の前で選ばれるのです。後日、額装が仕上がった絵は、とても嬉しそうに見えました。そして、その一部始終は、わたしにとって忘れられない出来事になりました。数年経った今でも、お着物に小物を合わせる時には、その時のことが思い出されるのです。あの額のように、少しだけ意外な色を合わせてみたい、と思うようになりました。お着物は小物が多いので色遊びが本当に楽しいのです。おしゃれは悩まずに心意気で、そう思うことに繋(つな)がる出来事でした。
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<器が張り切るお正月>
わたしはお節料理が大好物なのですが、年々、その中でも好きなものだけを揃えようという気持ちに移行してまいりました。無病息災など二の次です。錦卵と黒豆と栗の甘露煮と紅の蒲鉾(かまぼこ)と、数の子、千枚漬け、八つ頭の白煮、蒟蒻の煮物、お雑煮もいただきますので、そんなところでお腹はいっぱいになってしまいます。日をずらして豚の角煮を作ったり、お刺身を出したり、お雑煮を白味噌仕立てにしてみたり、お正月料理は飽きることがありません。
そして、楽しみなのが器選びです。さて、今年のお正月の器はどれにしよう、と考えて、使いたい物を並べてみます。お重箱を使う年もありますし、段重に詰める年もありますが、今年はおめでたい絵柄の中皿と銘々皿を使うことにしました。
父方の祖母から譲り受けた菓子皿と、母方の祖母が気に入っていた来客用の湯呑茶碗です。
梅と竹と紅葉(もみじ)と小菊と、何かわからぬ丸いぽんぽんとしたものが描かれている中皿は、お正月に使わずしていつ使うのかという愛らしさです。お振袖の柄のようで見惚(みと)れてしまいます。
凧揚げです。これほど幸せなお正月の様子を描いたお皿がありましょうか。
あまりの可愛さに初めて見た時に胸がきゅうっとなった豆鉢です。黒豆と栗の甘露煮をつけました。
梅の絵柄は冬の間に大活躍です。そして、洋物も和物も楕円の器がとても好きです。
昨年は何人かの親しい友のご実家のお片付けのお手伝いをさせていただきました。「終う」ことはわたしたちにとってもそう先のことではありませんが、お着物もご家族が大勢でいらした頃の器も、そのほんの一部をわたしの家に譲り受けました。もう少しだけ楽しい時間を、と大切にたくさん使わせていただこうと思います。