管理職は喜び半分、悲しみ半分なのだろうか。

管理職になってよかったと思う人が6割いる半面、心身の健康が損なわれた人が7割もいることが、就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2025年1月9日に発表した「マイナビ転職『管理職の悩みと実態調査』」でわかった。

せめて、管理職になったからには明るく、前向きに仕事をしたいもの。その方法を『マイナビ転職』編集長の瀧川さおりさんに聞いた。

悩む管理職、会社に望むサポートは「管理職手当の増額」だけ

マイナビの調査(2024年9月20日~26日)は、20代~50代の管理職800人(20代51人、30代349人、40代と50大各200人)が対象。

まず、管理職になってよかったかを聞くと、「よかった」と感じている人は約6割。係長・チーム長クラスでは約半数に留まるが、役職が上にいくほど多くなり、本部長クラスは約8割にのぼる【図表1】。

自由回答で聞くと、「部下の成長に喜びを感じる」「自分の課を持ってある程度自由な采配ができる」「給料面で余裕ができ家庭も安定する。苦労が多い分、やりがいが大きい」など声が相次いだ。

管理職になって年収が上がった人は約8割で、上昇額の中央値は約100万円だった。管理職になってよかった人の年収中央値は700万円だが、良かったと感じていない人は550万円で、約150万円の差があった【図表2】。

一方、管理職になってからの人生の変化を聞くと、「心身の健康が損なわれた」という人は約7割、「プライベートや家族との時間を楽しめなくなった」という人も半数超おり、心身や私生活に問題を抱えながら管理職を続ける姿が浮き彫りになった【図表33】。

仕事上の悩みでは、「業務の負荷が大きい」に加え、「パワハラなどハラスメントと言われるのを避けたい」「部下が成長しない」などを訴える人が多く、部下の指導に苦労している様子がうかがえる。

このため、今後昇格したい人は約半数に留まり、次長課長以下の役職では「管理職を辞めたい」人も約2割いる。興味深いのは昇格の希望の調査結果だ。どうせ昇格するなら「別の会社で昇格したい」という人が結構多く、「今の会社で昇格したい」という人の5~8割いることだ【図表4】。

そして、会社に期待するサポートや制度の変更を聞くと、サポートや制度の変更を望む人は2割程度で、「管理職手当の増額」が約4割とダントツに多かった。給料のアップ以外に今の会社に期待するものはないということだろうか。

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本部長・部長が見る景色と、課長・係長が見る景色は違う

J‐CASTニュースBiz編集部は調査をまとめた『マイナビ転職』編集長の瀧川さおりさんに話を聞いた。

――【図1】を見ると、「管理職になってよかった」と感じる割合が、係長クラスでは約半数ですが、本部長クラスでは約8割と、上位にいくほど高くなっています。やはり責任が重くなると、それだけ仕事が充実して面白いということでしょうか。

瀧川さおりさん 部長や本部長などのトップマネジメント層も、係長やチーム長のロワーマネジメント層も、いずれも「管理職になってよかった」理由としては、「部下から頼られることが増え、やりがいのある仕事が増えたこと」などをあげる人が多い。頼られる喜び、権限の大きさや仕事の面白さ、自身の成長実感に関するコメントが目立ちました。

また、管理職は下の階層から昇進していきますから、初めて管理職になる係長やチーム長は、まだ部下との向き合い方の経験値に差があり、ストレスを感じやすいという点があります。一方、部長や本部長になると、さまざまな悩みやストレスを抱えながらも乗り越え、成果を出してきた「管理職が向いている人」である可能性が考えられます。

――上にいくほど管理職の苦労を積んできただけに、上から見える景色も喜びが満ちているわけですか。中間の課長クラスはいかがですか。

瀧川さおりさん 「現在の職務」を役職別に聞くと、役職が低いほど「上司の補佐」が増えます。課長クラスは、マネジメントと細かな作業の双方の役割を求められる側面があるのかもしれません。

また、課長は「部下のモチベーションをあげること」「上司の補佐」「部下への指摘」などの職務が多いです。部長が会社の方針に理解があり、モチベーションの高い人材と接することが多いのに比べ、課長はモチベーションから経験スキルまでさまざまなレベルの一般社員と接する傾向にあります。

コメントでも「部下ガチャによって評価が上下する」とあり、ロワーマネジメント層ならではの気苦労もあることかと思います。