Aさんが税務調査の対象となったワケ
Aさんの父は長年、その地域のなかでは有数の工務店を経営していました。自営業ですから、毎年欠かさず確定申告も行っています。
こうした情報から、Aさんの所得についておおむね把握している税務署は、過去の所得状況から鑑みて相続財産が少ないのではないか? との疑いをもち、Aさんの父を税務調査の対象に選んだのだと考えられます。
また、相続税の申告の場合、中身が複雑であるため約85%の申告者がプロである税理士に依頼しています。税理士を頼まずに自己申告した場合、税務署に疑われやすい(調査対象に選ばれやすい)といえるでしょう。
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課税「される形見」と「されない形見」の差
Aさん自身、高級腕時計のブランドについて知っているのはロレックスぐらいのもので、その他の腕時計については詳しい知識を持ち合わせていませんでした。また形見が課税財産に含まれるという認識がなかったといいます。
しかし、相続税の課税対象は、「金銭的価値があるすべてのもの」です。つまり、高級腕時計だけでなく、自宅のなかにある家財などもすべて相続税の課税対象財産となりえます。
自動車や宝石、掛け軸など、家財道具1つあたり5万円を超えている場合には、個別に評価して「相続税財産」として加える必要があります。
なお、家財のなかに1点あたり高価なものがない場合には、まとめて「家庭用財産一式10万円」などとして申告するケースが多いです。
国内外問わず腕時計をコレクションしている人は多く、なかには値上がりの売却益目当てに投資目的として購入する人もいます。
2019年には、世界で1本しかないパテックフィリップが、約34億円という過去最高額で落札されたこともあります。これは極端な例としても、高級腕時計には財産価値があると考えたほうがいいでしょう。